20年東京オリンピック(五輪)の男女マラソンと競歩のコースについて、国際オリンピック委員会(IOC)の札幌案浮上から一夜明けた17日、日本陸連は混乱に陥った。麻場強化委員長は「いきなり言われてもどうしていいか、わからない。情報収集と対応を進めていくところ」。緊急で強化トップの会合の招集作業に入った。

約2年かけたマラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)が水の泡になる札幌案だが、代表に内定した男女2人ずつの変更なし。麻場委員長は「それは絶対にできない。それだけは言えます」。

尾県専務理事は、札幌開催の場合、警備や医療の面から北海道マラソンに準拠するコースが現実的との見通しを示した。ただし「決まればやるしかないが、めちゃくちゃ大変だと思う」と口にした。

尾県専務理事、麻場委員長はともに前夜に札幌案を知った。麻場委員長は陸連事務局からの電話を受けて「なんと!」と思わず声を上げたという。変更のきっかけとなった世界選手権ドーハ大会には日本選手団監督として参加。「私は(変更まで)思ってなかった。ドーハを見て、ますます暑熱対策をして、東京五輪に臨まないと、と考えた。まさか都市が変わるとは…。だって東京五輪ですから」。

東京を前提とした暑熱対策やレース分析は再考を迫られる。麻場委員長は「決まれば、強化としては対応するしかない」と腹をくくっていた。【益田一弘】

▽日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの話 東京五輪マラソン・競歩開催地変更の検討に関しまして、突然の発表であったため大変驚きました。詳細や方向性については、今月30日からIOC調整委員会と大会組織委員による協議が予定されているようなので、その後の動向を注視していきたいと考えおります。

<東京五輪マラソン札幌開催による今後の課題>

◆チケット 8月9日の男子マラソンは1種目のみのチケットだが、同2日の女子マラソンのものは新国立競技場で陸上6種目、3表彰式が見られるチケットで「払い戻し」するにしても一筋縄にはいかない。この内、女子マラソンだけが札幌になれば、仮に「○%払い戻し」という策を取るにしても販売システム上、それができるかも現時点で不明だという。

◆費用分担 恒設施設は自治体、仮設は組織委負担という原則がある。札幌市の秋元市長は早速、その原則を主張。森会長はIOC負担を要請したが、結論には至っていない。

◆選手輸送 男子マラソンが行われる8月9日は、夜に閉会式が行われる。森会長は「競技後、一斉に飛行機で帰る案など、式典チームの野村萬斎さんらが考える」などと話した。

◆宿泊 大会関係者、観客のホテルが足りなくなる可能性がある。

◆沿道警備 これまで警視庁が計画してきたものを道警が担うことになる。警視庁案を道警がそのまま引き継げるかなど課題は多い。道警幹部は「北海道マラソンでも準備は数カ月かかる。五輪はより規模が大きい。警視庁からノウハウをもらわないと…」と危機感をあらわにしている。