桐生祥秀(24=日本生命)が大接戦を制した。向かい風0・2メートルの決勝で10秒27。100分の1秒差でケンブリッジ飛鳥(27=ナイキ)に競り勝ち、東洋大1年時以来、6年ぶり2度目の優勝を果たした。

期待された記録は不発だったが、見事に勝ちきった。気持ちよくシーズンを締め、東京オリンピック(五輪)が行われる来季へ向かっていく。

   ◇   ◇   ◇

桐生は、準決勝のスタートでリズムを崩したところが決勝でも尾を引いたと思う。ただ今回は世界大会に直結しないため、課題を試せる。今季の桐生は安定して10秒0台で出しているので、さらにワンランク上を目指すチャレンジだろう。五輪から逆算すれば、早く9秒台に入る準備が必要になる。10秒を切って100メートルの決勝で走る、という明確な目標があるための挑戦だ。

10秒27が優勝タイムだったのは、気温20度前後の10月ならではの難しいコンディションがある。ウオームアップからレースまでの間、急激に寒くなるため、スプリンターにはつらい。桐生のレベルになれば、自覚はなくても、筋肉は敏感に反応するものだ。

上位は混戦となったが、7位だった高2の柳田大輝は、上位との距離感が縮まっている。半年後が非常に楽しみだ。また200メートルが本職の飯塚が4位。400メートルリレーで活躍したい、という気持ちだろう。このベテランの充実度が400メートルリレーにおける日本の立ち位置を決める。飯塚が1枠を奪いにいけば、他の選手も刺激されて、切磋琢磨(せっさたくま)することになる。今日のレースで東京五輪400メートルリレーに明るい道が示された。(男子100メートル元日本記録保持者)