3年前から開催されている中田周三杯。今年はいろいろ制限はあったものの、無事に12、13日に金沢プールで開催された。


中田周三杯会場の金沢プール
中田周三杯会場の金沢プール

中田氏は1911年(明44)、石川県金沢市生まれ。飛び込み選手として活躍したのち、指導者として7人のオリンピアンを育成した名コーチだ。

そして、その教え子たちがコーチとなり、全国へ広がったことで、日本の飛び込み界がつくられた。そう言っても過言ではないほど、日本の飛び込み界では功績のある人物の1人だ。

そんな中田氏の思いを受け継ごうと、3年前から始まった中田周三杯。

試合会場には中田氏がつくり上げた歴史がずらりと飾られていた。大会メダルも毎回デザイナーに依頼するというこだわり。今年はメダルのひもの部分に牛首紬(うしくびつむぎ)を使用し、石川の伝統がさらに追究されたものとなっていた。


会場に展示された中田周三氏の歴史
会場に展示された中田周三氏の歴史

そして今大会には、1週間ほど前から金沢で合宿していたナショナルチームもオープン参加した。まだ飛び込みを始めたばかりのジュニアの選手から、荒井祭里、三上沙也可ら東京オリンピックに内定している選手や、オリンピックの最終選考会であるW杯に出場する選手たちが戦うという、なかなかないシチュエーションでの試合だった。まだまだ同じ舞台で戦えるレベルではないジュニアの選手たちにとっては、とても貴重な経験だったに違いない。憧れの選手たちとともに競えて、記憶に残る試合になっただろう。

試合の緊張は試合でしか味わえない。いくら練習の中で試合を想定したトライアルをこなしても、雰囲気やプレッシャーは実際とは全く違う。現役時代、私はそう感じた。

日本では秋から冬にかけてはシーズンオフとなり、スケートリンクになって使えなくなるプールも多い。そのため、国内ではあまり試合が開催されず、試合での感覚を忘れてしまう選手も少なくない。そんなシーズンオフに開催される試合は、夏のシーズンに向けての準備としてはとてもいい機会だ。

ナショナルチームの選手たちにとっても、今年は貴重な試合の1つとなっただろう。


ひも部分に牛首紬を使用したメダル
ひも部分に牛首紬を使用したメダル

私も審判員として参加してきた。久しぶりにナショナルの選手たちの演技を見るのがとても楽しみだった。コロナ禍での調整にもかかわらず、よく練習出来ていることがうかがえた。東京オリンピックの最終選考会となるW杯は、今のところ来年4月中旬に開催予定だ。そこへ向けて、全体的にいい仕上がりになってきていると感じた。

特に目を引いたのは、やはり若くして東京オリンピック出場が期待されている玉井陸斗(14=JSS宝塚)だった。以前よりも安定感が増し見応えのある演技を披露してくれた。


引退してはや4年。いまだにプールへ行くと思うだけで、現役時代の感情が鮮明によみがえってくる。そして、選手が試合へ臨むキリリとした表情を見ると私まで緊張してくる。

今回も審判として参加するだけなのにもかかわらず、試合が終わり家に着くとどっと疲れを感じた。それでもやっぱり飛び込みは面白い。

引き続き皆さんに飛び込みの魅力をお伝えできるよう努めていきたいと思う。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)