バレーボール男子日本代表の中垣内祐一監督(51)から「熱」を感じられないのは僕だけだろうか? コードサイドに立つ表情、タイムアウト時の振る舞い、試合後の記者会見…。なぜか少しさめた、1歩引いた印象を受ける。勝敗に涙することもある女子代表の中田久美監督(53)とはとても対照的だ。

11月20日、日本協会で臨時理事会が開かれた。議題は日本代表監督人事。中田監督の続投は問題なく決まったが、中垣内監督については結論が出ず、嶋岡健治会長(69)一任で続投に落ち着いた。同会長は会見でその理由をこう説明した。

「世界選手権では期待に沿えなかったが、上位国と戦う基礎はでき上がった。この2年間を無駄にしたくない。みなさんもご存じの通り、今の代表はブランのチームになっている。中垣内にはこれまでの代表になかった監督とコーチの関係を築いてもらいたい」

昨春の中垣内体制スタート時にフィリップ・ブランコーチ(58)も就任した。元フランス代表の名選手で、01年から母国代表を率いて02年世界選手権3位、03年欧州選手権準優勝、04年アテネ五輪出場に導いた名指導者。中垣内監督自身も納得の上でブランコーチに練習内容や戦術、試合中の指示などを委ねてきたことも事実だ。ただ、嶋岡会長も「ブランのチーム」と明言するほど、この2年間で指揮権が一方的に集約されてきた。その現状が中垣内監督から「熱」を奪っているのではないだろうか。

「ベスト8相当」の目標を掲げて臨んだ9月の世界選手権(イタリア・ブルガリア共催)では、6チームで戦った1次リーグで2勝3敗の5位に終わり、敗退。16チームによる2次リーグに進めず、98年の15位を下回る史上最低の成績にとどまったことで中垣内監督の去就が取りざたされることになった。世界選手権から2カ月後に出た結論が続投で、中垣内監督に求められたのは「これまでにない監督とコーチの関係」だった。

中垣内監督はチーム内での立ち位置をどう確立していくのか。協会幹部が「日本にいてくれるだけでありがたい指導者」と評価するブランコーチとの関係が、今後どう変化していくのか。来年5月末からは世界各国を転戦するネーションズリーグ、10月には国内でワールドカップ(W杯)が開催される。20年東京五輪前年、結果が求められる。【小堀泰男】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)