女子ゴルフツアーの試合数が減少して喜ぶファンはいないだろう。

日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は18日、都内のホテルで会見を行い、19年ツアーの日程を発表した。新規1試合が加わり、当初は39試合になると思われていたが、フタを開けてみれば18年から2試合減の36試合。賞金総額は3336万円減の37億500万円と史上最高額更新は6年連続でストップした。3月のKKT杯バンテリン・レディース(熊本)、5月の中京テレビ・ブリヂストン・レディース(愛知)、9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子(宮城)が中止となったことが大きいだろう。

4試合の賞金増額があって減額幅も少なく、客観的に見れば18年と変わらない日程にみえる。しかし11年の東日本大震災に見舞われた宮城、16年の熊本地震の被災地を元気づけるはずの2試合が来年は開催されないことに驚かされた。被災地復興に力を入れてきたLPGA小林浩美会長は「非常に残念です。今でも開催していただきたいと思います」と述べ「(交渉の)窓口は開いております」と口にしたものの、主催者に提示している交渉の前提条件は一貫してシビアなものだ。

過去の試合中止は主催者側の財政的事情などが理由だったが、今回は違う。財務基盤の確立などを理由に同協会が「放送権の一括管理」に乗り出したことが背景にある。昨年2~8月にかけて各大会主催者すべてにこの意向を通達。12月13日を期限に区切り交渉を進めてきたが、最終的にテレビ局主催の3試合が中止になった。また都心から近い会場で大観衆が集まる国内メジャー第1戦、ワールド・サロンパス・カップも共催する日本テレビと合意できず、ウィメンズ選手権(仮称、会場未定)という発表にとどまる異例な事態となった。

1967年のLPGA創立以降、女子ツアーはテレビ局による大きな協力関係によって発展してきた歴史がある。この51年間、主催者が放送権を保持していただけに、2年弱の交渉で、すべて合意できるほど簡単ではないだろう。日程発表後、年間14大会だった1973年から同ツアーを開催してきた日本テレビは「これまで通り放映権は大会の事業リスクを負い、施設運営権を有する主催者に帰属すること、トーナメントを開催する意思に変わりがないこと、LPGA側との協議に誠実に対応し、継続を求めていくことを訴えてまいりました」と真摯(しんし)に交渉してきた経緯を説明。さらに「LPGA側の協議に臨む姿勢は誠実さを欠くもので、かつ放映権帰属の議論が十分にされないまま、今回の発表に至ったことは弊社としてもはなはだ遺憾です」ともコメント。大会開催の意思を表明した上で、引き続きLPGA側に誠実な対応を求める意向を示した。

放送権を一括管理できた19年を「画期的な第1歩」と表現した小林会長は同年3月の開幕に向け、インターネット配信会社と放映権販売の交渉していることも明かした。選手の年金制度の確立、会費削減、フィットネスカーの導入や託児所の設置といった会員や選手の福利厚生を充実させるため、確かにLPGAの財政安定化は不可欠。近年、他競技の放映権契約が高額で成立していることもあり、理解もできる。ただ従来通りの「放送権の一括管理ありき」のままでは、大会開催意思のある主催者との交渉は平行線をたどるだろう。

将来的には、さらなる試合数減、テレビ中継減など、ゴルフファンが喜べない現象が次々と起こる可能性が残っている。熱心に会場へ足を運ぶギャラリー、テレビ中継を楽しみにしているファンあっての競技。支えてくれる人々がマイナスに感じる方向に進むことだけは回避してほしい。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)