中京テレビ・ブリヂストンレディースを制し、優勝者インタビューを終え万歳する勝みなみ(2019年5月26日撮影)
中京テレビ・ブリヂストンレディースを制し、優勝者インタビューを終え万歳する勝みなみ(2019年5月26日撮影)

勝みなみ(20=明治安田生命)の会見は記者泣かせだと言われる。今季ツアー2勝目を挙げた中京テレビ・ブリヂストン・レディースでも、3日間、目標を聞かれると「笑顔で楽しくゴルフをすること」と言い続けた。

記者からすれば、「優勝」とか「米ツアー挑戦」とか「オリンピック(五輪)出場」とか、日々の成績の先にある具体的な言葉を引き出したいところだが、そういう記者にとっておいしいコメントがなかなか聞けないのだ。

昨年は終盤に初勝利こそ挙げたが、期待されたほどの成績を残せなかった。その反省を踏まえ勝は自分を変えるために、オフに2つのことに取り組んだ。1つは、メンタルトレーニングで、もう1つがイ・ボミの全盛期を支えた大迫伸二トレーナーとの契約だった。

メンタルについては、プロデビュー前の17年オフからマネジャーに先生を紹介されていた。当初は先生の話の意味も分からなかった。「自分はメンタルじゃなくて、どこかスイングが悪いと思っていた。言葉ではメンタルといっても、心の中ではメンタルじゃないと思っていた」という。

それが、18年オフの新人研修で、違うメンタルの先生の講義を聴いて「自分が前に教わった先生と同じことを言っている。考え方が分かった」と納得できた。18年の結果が出ない苦しい経験を踏まえ「実際には考え方が問題で、考え方を変えただけで(今年は)上位にいっているし、ゴルフが楽しくなった」という。

結果にこだわるのではなく、その過程に全力を尽くす。以前は、1打1打に一喜一憂していたのが「今、この時間をどれだけ楽しむか。それが、最近できるようになった」と話す。だから、インタビューでも勝のコメントから結果や目標につながる言葉が消えた。

大迫トレーナーは、オフに勝と出会ったとき「よくこんな体でゴルフができてるな」と驚いたという。「ゴルフは捻転のスポーツなのに、彼女の体は捻転の動きができていなかった。工事現場で働いてるおじさんのような体だった」という。そんな体を、オフのトレーニングで改良。下半身を鍛え、上半身と連動して体のひねりが、スイングや飛距離につながるようになった。ドライバーの飛距離は約10ヤードも伸びた。何より大迫トレーナーの「体のゆとりが、心のゆとりにもつながる」というアドバイスが勝には効果的だった。

メンタルトレーニングを当たり前のように取り入れている欧米や韓国に比べると、日本のスポーツ界は遅れていると言われている。それでも、W杯イングランド大会で大活躍したラグビーの日本代表や、バスケットボールのBリーグで2連覇を達成したアルバルク東京など、メンタルトレーナーの採用が結果につながるケースも、遅ればせながら出てきている。

勝の活躍は、ゴルフ界にとっても日本スポーツ界にとっても喜ばしいことだ。自分を変えるために、自分から新たな取り組みにチャレンジする選手が、これからもどんどん出てきてほしい。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

ティーショットを放つ勝みなみ(2019年5月26日撮影)
ティーショットを放つ勝みなみ(2019年5月26日撮影)