プロが競技を楽しむためには? 

ツアー通算48勝の中嶋常幸(64=静ヒルズCC)は、単純明快な解答を持っていた。「強い者に勝つことだ」と。10月7日、東京・品川区のホテルで開かれた住友ゴム工業のゼクシオ新商品発表会。男子プロの大堀裕次郎(28)、女子プロの新垣比菜(20)、メジャーで活躍したプロ野球元巨人投手で自称「エンジョイ・ゴルファー」の上原浩治氏(44)とともに同発表会に登場した際のひとコマだ。

大堀が「今年は成績あまり良くないですし、今は心からゴルフを楽しめていないですね。全力で楽しんでやりたい」と言葉を振り絞れば、上原氏も共感。「プロになると楽しむのは難しい。野球はアマの時はすごくたのしかったですけれど、実際にプロとなったら仕事になってくるわけです。プロなんで勝たなくてはいけない重圧があって。楽しむのは難しい」と現役時を振り返った。

すると、中嶋は表情を緩めながら言った。「大堀君、1つ楽しむ方法を教えてあげる。プロだからなかなか楽しめないと思うけれど、でもね、強い選手に勝つということを覚えたらいい。上原さんもメジャーリーグで強い選手と対戦して投げて三振取ることに面白さがあったと思う。ぜひゼクシオを使って強い選手を打ち負かしてください」。

中嶋には強い先輩たちがいた。「ボクはね、上にAとOという人がいたんでね。この人たちに勝つことが楽しみでしようがなかったんです」。A=青木功(77)、O=尾崎将司(72)の2人に競り勝つことを「楽しみ」にしていたという当時の心境を明かした。

日常生活に落とし込めば、先輩や同期に営業成績で競り勝った瞬間の喜びなどは大きなものだろう。ただスポーツ界で強い相手に勝つことは、選手本人のみの楽しみで終わらない。現在、開催中のラグビーワールドカップ(W杯)で日本代表が世界の強豪を下した姿に、観戦者やファンは歓喜し、感動を覚える。それは人気も注目も集める。「強いものに勝つ」ことに楽しみを見いだしたからこそ、中嶋は日本ゴルフ界の誇るレジェンドになったのだろう。

競技の楽しみ方というよりも、プロの醍醐味(だいごみ)を大堀らに伝授したように思えてならなかった。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

ゼクシオ新商品発表会で、中嶋(左)とトークショーに出席した新垣
ゼクシオ新商品発表会で、中嶋(左)とトークショーに出席した新垣