プロ7年目の永峰咲希(25=ニトリ)が、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯で勝った。

黄金世代、ミレニアム世代、笹生優花ら今春高校卒業の新世紀世代。20歳前後の活躍ばかりが目立つ時代に、20代半ばのプロが国内メジャーのビッグタイトルを手にしたのは、ツアー活性化の点で意義深い。それがまた永峰のようなタイプだったのが、おもしろい。勝手にそう思っている。

永峰は18年4月フジサンケイクラシックでツアー初優勝した。当時プロ5年目の22歳。ルックスも母香奈子さん譲りでキュート。ブレークしても良さそうだったが、そうならなかった。

初優勝から日本女子プロ選手権まで、出場66試合でトップ10は8試合だけ。昨季は賞金ランク45位でシード確保に苦労した。単純に結果が出ないから目立たない。それはある。ただ永峰自身、目立つのが苦手という性格も影響したと思う。

ガッツポーズをしない。バーディーを取ると、キャップのツバに軽く手を添えるだけ。普段はニコニコしているのに、ここぞの場面では逆に笑顔を控える。

4、5年前だったか、香奈子さんが嘆いていた。

「プロのメークさんにせっかくきれいに化粧してもらったのに、すぐ落としたんです。“何で? そのままでいいじゃない”と言っても、本人はフンッて」

用具使用契約を結ぶテーラーメイド社が公式HPで新製品発売に合わせ、永峰の画像をアップした。髪のたなびく、美しい横顔。見る者がハッとする、彼女の持つ素朴なイメージをいい意味で裏切る“オトナのビジュアル”だった。ところが、撮影後30分もせず髪形を戻し、化粧を落とした。

世間的なオシャレに興味がない。見かねた香奈子さんに化粧道具を買いに引っ張っていかれたりした。

お気に入りの服装はジャージー。家の中だけでなく、外出時も着る。

少年漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」をこよなく愛し、同じく“両さん好き”の父賢一さんが買って来ると、喜々とし、連載終了時はショックを受けた。

若手プロ、いや世間一般の若者が“自己発信ツール”として積極的に活用するインスタグラムなどSNSにも手を出さない。

ボーイッシュで、今どきの女性的ではない素顔を持っている。

それがゴルフになると「味」になる。興味のないことには見向きもしないが、興味がある、大事、必要と思えば、徹底的に打ち込む。周囲にどう言われようが絶対に信念を曲げない頑固さ。自分の価値観を信じ、コツコツ積み上げてきた。

日本女子プロ選手権の優勝オンライン会見で、永峰は言った。

「私のモットーは、人に迷惑をかけない、なんですけど…」

人に迷惑はかけません。でも、それ以外は一切、好きにやらせてもらいます-。華やかさがクローズアップされる女子ゴルフ界にあって、永峰咲希のようなキャラクターは貴重だ。もっと強くなって、令和の時代に、平成生まれで昭和の香りを漂わすプロに…。骨太なプロになることを期待している。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)