新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で、ゴルフ取材のほとんどがSNSのアプリを使ってのリモートになっている。昨年の2月、3月ごろは電話取材が多かったが、リモートだと対面で、相手の表情も分かるので、なんとなく慣れてきた。

コロナ禍の中、3月の開幕戦に向けて、選手たちは合宿などの調整に余念がないようだ。昨年に比べれば、ゴルフ場での練習や合宿などもできる範囲が広がっているようだ。昨年暮れにインタビューした日本ゴルフ協会(JGA)のガレス・ジョーンズ・ナショナルチーム・ヘッドコーチは、コロナ禍でもやり方を考えれば、十分強化はできると話していた。

昨年の1月から3月初めまでは、宮崎合宿やオーストラリア遠征など通常の練習ができていた。しかし、2月末ぐらいからコロナの影響が出て、コーチングスタッフで今後の対応を協議したという。地方に散らばっている高校、大学生にZoomを利用して週1回の講義。ウエートトレーニングや、栄養、身体活動が落ちる中でどう食事を取るか、どのように自分の心や体を整理していくかを指導した。

緊急事態宣言が明けると、プログラムに変更を加え、ゴムバンドなどを使ってスイングに特化した姿勢維持のトレーニング(ドライドリル)を選手のスケジュールに合わせ週3回、1回45分のセッションを行った。最初は講義から始まり、6月からはドライドリルに移行していった。

選手とのコミュニケーションのほとんどが、デジタルアプリケーションによるものだったが「ライブで同じ時間に選手とつながれるのは、非常に効果が高かった。コーチナウというLINEのスポーツバージョンみたいなアプリにスイングを上げて話し合ったり、ゴルフのラウンド統計分析ソフトを使って、それに入力してもらって話し合いをした」とジョーンズ氏。

統計ソフトにはスケジュールをつくる機能もあり、選手に自分の時間を整理して効果的な時間の使い方をするように促したという。「そういった習慣をずっと続けていってほしいと私は思っています。なぜかというと、ナショナルチームの選手の中で活躍しているベストなプレーヤー、例えば金谷拓実や中島啓太、米沢蓮といった選手は難しい環境の中でも、自分自身の行動を順応させていくことができました」とジョーンズ氏は言う。

コロナ禍という未経験の災難にどう対応していくのか。スポーツ界だけでなく社会全体で問われている問題だが、自粛生活の中で、何ができるかを前向きに考えていくことが、現状打破につながると思う。コロナ禍で構築したアプリによるコミュニケーションについて、ジョーンズ氏は「Zoomでのコミュニケーションはコロナ禍から通常に戻っても続けていこうと思っています。それぐらいの効果があった」と今後も継続する方針だ。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

金谷拓実(2020年11月20日撮影)
金谷拓実(2020年11月20日撮影)