コロナ禍の影響で、今年もギャラリーを入れて開催する国内女子ツアーは少ない。そんな中、6月に開催されたアース・モンダミン・カップは、久々にゴルフ番の雰囲気を取り戻した大会になった。コースを回ると、あちこちで歓声と拍手が起こる。選手たちも、生き生きとして見えた。

決勝ラウンドの第3日。東京オリンピック(五輪)出場にわずかな望みを残す古江彩佳の組について回った。5番パー4のグリーン上。多くのギャラリーが囲んでいた。5アンダーで回っていた申ジエがバーディーパットを外し、約1メートルほどのパーパットを残した。難なく決めると思われたが、カップの中でボールが一瞬飛び出しそうになりながら入った。

見守っていたギャラリーの反応も、ほんの一瞬驚いたような間があり、次の瞬間どっと拍手が起こった。ヒヤリとしたはずの申も、おどけたような表情をしながら、ギャラリーに深く一礼。このしぐさに、またギャラリーが沸いた。

1つのプレーを介して、ギャラリーとプレーヤーの心の交流を見たような気がした。ベテラン選手ならではのギャラリーとの心の交流を見るようだった。驚きと安堵(あんど)、さらに励ましが入り交じったギャラリーの温かい拍手と、それにおどけたような顔をつくって応じた申。これこそが、選手がいつもいうギャラリーがいてくれることの、心強さにつながるのだと思った。

資生堂レディースで1年8カ月ぶりに優勝した鈴木愛も、コロナ禍の中でギャラリーがいないことを嘆いていた。「ギャラリーさんがいないことは大きかった。私はみなさんの気持ちをもらい、ガッツでいくタイプ。いないと気合が入らないし、ここでいいショットを見せてやろうという気持ちでやっている」。鈴木にとっては、ギャラリーの反応も、自分のプレーを確認する大きな役割を果たしていたのだと思った。

優勝を決めた終盤の3ホール。16番パー5で決めた逆転のイーグル。さらに、17、18番でのしびれるパーパット。もし、ギャラリーがいたら。16番グリーンでは、大歓声が鈴木を包み込み、さらに鈴木を奮い立たせただろう。17、18番もギャラリーがかもしだす雰囲気の中、鈴木は安心感を持って攻めたと思う。

ギャラリーがいることが当たり前の日常がなくなって、選手とともにあらためてギャラリーのありがたさを感じられた2つの大会だった。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)