来季の米女子ゴルフツアー出場権を懸けた最終予選会(Qシリーズ)で、古江彩佳(21=富士通)が堂々の7位につけて、残る4日間に挑むことになった。最終予選会は2週間、計8ラウンドで争われ、すでに第1週の4ラウンドを終え、上位74人が第2週に進出。スコアは持ち越しで、9日からの第2週は、米アラバマ州のハイランドオークスGCに場所を移して行われる。45位タイまでに入ればツアーメンバー入り。ただし、順位が高いほど出場可能な試合数は増える。現在24位の渋野日向子とともに、来季のほとんどの試合に出場できるとされる、20位以内を目指すことになる。

今季の国内女子ツアーでは、総合的に活躍を評価するメルセデス・ランキングで1位となった。賞金女王争いでは、わずかに稲見萌寧に及ばなかったが2位。一時は独走していた稲見を終盤に猛追した。9月の住友生命レディース東海クラシック終了時点で、約7248万円と開いていた稲見との差を、その後3勝するなどして、残り3戦の時点では約397万円差まで詰めた。史上最大の逆転賞金女王を目指したが、結果的には11月12~14日に行われた伊藤園レディースで、稲見がシーズン9勝目を挙げたことが大きかった。残り2戦で差を広げられ、届かなくなった。ただ、このころから古江が別人のようになった。闘争心むき出しのコメントが増えていった。

伊藤園レディースで、優勝の稲見が1800万円を獲得したのに対し、5位の古江は500万円にとどまった。残り2戦で差は約1697万円。その伊藤園レディース最終日のホールアウト後に古江は「賞金差というより、勝つか負けるかだと思う。差を縮めるのではなく、勝つか負けるかを意識したい」と、真っすぐ前を向いて話していた。

それまでの古江は、試合中や試合の前後に、ここまで勝敗や成績を意識したコメントをすることは少なかった。ましてや特定の誰かを意識し、ライバル心を見せることなどなかった。いつでも温厚。笑顔の受け答えは変わっていなかったが、伊藤園レディース終了時点で、他の選手に賞金女王の可能性が消滅。コメントの変化もあって、一騎打ちムードが一気に高まった。

最終戦のツアー選手権リコー杯の前も、強烈に稲見を意識したコメントを残した。稲見には、夢見ていた東京五輪代表の座を逆転で奪われた形。その雪辱の思いがあるか問われると「同じことは繰り返したくない。そこは意識しながらやりたい」ときっぱり。今年中盤戦までの古江の印象だと「とにかくこの試合に集中したい」といった“優等生コメント”が返ってくると、勝手に予想していた。だが賞金女王への思いの強さは、想像以上だった。

今回、米女子ツアーに挑戦したのも必然といえる。トップに挑みたい、トップに立ちたい思いは幼少期から変わらない。コーチでもある父の古江芳浩さん(52)が明かした。「5歳か6歳の時ですかね。練習場で打っていると、隣にいたおじさんから『上手やな。将来はどうするんや?』と聞かれたんです。すると彩佳は『タイガー・ウッズに勝つんや!』と言っていました。とんでもないことを言うなと思いました(笑い)」。

誰にも負けたくない、米国でトップに立ちたい-。古江の中では、潜在的にずっと抱いていた思いなのかもしれない。芳浩さんが「負けず嫌い」という、本来の性格を、今季終盤戦は包み隠さず出していただけなのだろう。残り4日間の米女子ツアー最終予選会。20位以内という目安はあるが、今季終盤戦で見せた「負けず嫌い」の一端は、強烈な印象としてゴルフファンの中でも残っているはず。トップ通過を期待せずにはいられない。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)