日本のゴルフ界は最近、若い新しい力の台頭が著しい。そんな選手たちが合言葉のように口にするのが「ショートゲーム(100ヤード以内)の技術の向上」だ。16日の日本ゴルフ協会(JGA)ナショナルチーム慰労会を取材した際に、15歳から在籍した中島啓太(22=日体大)は「ショートゲームの練習はナショナルチームに入るまでなかった。先輩方がそういう練習をした中で、それをまねてみんなが強くなった」と証言した。

米国で活躍する松山英樹や畑岡奈紗ら先輩を追って、中島もナショナルチームで育てられた。18年アジア大会で個人、団体ともに優勝し、20年11月には世界ランキング1位。21年、22年と史上初めてマコーマックメダルを2度受賞するなど、アマチュアで世界の頂点を極め今秋プロに転向した。

そんな中島を始め、今季米女子ツアー参戦1年目で1勝を挙げた古江彩佳、アマチュアながら日本オープンなど2勝を挙げた蝉川泰果らを育てたのが、オーストラリアからJGAに招聘(しょうへい)されたガレス・ジョーンズ・ヘッドコーチだ。

「15年に日本に初めて来た時は非常に勤勉な選手が多かったが、何回もボールを打ち続けるだけの選手がすごく多かった。私はスコアに直結するような練習を提案してきた。練習の方法は環境に依存するので、これからもショートゲームの練習場が増えるようなレガシーを残していきたい」と、ジョーンズ氏は訴えた。

ジョーンズ氏の就任によって、明らかに日本のゴルフ、特に若い年代の選手の成長が促進された。選手たちが、新しい練習法を学び、常に世界を頭に置いて練習に向かうようになった。中島は「ナショナルチームのみんなで世界基準について話し合ってきた。ゴルファーである前に、アスリートとしてのトップを目指していけたら」と話した。

慰労会の前には、中島や蝉川、全米女子アマチュア選手権優勝の馬場咲希らが参加してスポーツ庁の室伏広治長官との座談会も行われた。選手たちは、アテネ五輪のハンマー投げで金メダルを取ったトップアスリートとしての室伏長官に、世界で戦うための心構えや、うまくいかないときの具体的な対処法を聞くなど、貪欲な姿勢を見せた。

ゴルフもハンマー投げも同じ動作を繰り返すスポーツで、室伏長官からは「あえて外的要因を変えて、適応できる能力を身につけて」と、アスリートの先輩としての具体的な解決法を伝授された。

ジョーンズ氏はこれからも日本の若者の指導を続ける。第2の松山、畑岡らがこれからも続々と育っていくだろう。ジョーンズ氏の教えはナショナルチームにとどまらず、多くのゴルフを志すジュニア世代へも広がっていくはずだ。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)