最終18番ホールで、30センチのウイニングパットを決めて、菊地絵理香(28=オンワードホールディングス)が笑って、軽く両手を掲げた。

 「う~ん、何ででしょうね。基本的に春先は得意じゃなく、夏の方が…と思っているので。でも、結果的にシーズンの早い段階で勝てているので『得意なのかな?』と思ってみたりして」。過去のツアー2勝は4月、今回が3月。春の遅い北海道出身なのに、全3勝が春という“春女”がイタズラっぽく笑った。

 2位と2打差の首位でスタートした最終日、高いショット力を見せて、後続に影も踏ませず逃げ切った。1番パー5で左バンカーから、残り85ヤードの第3打を51度のウエッジで1・2メートルにつけ、バーディー。5番パー4も右バンカーから、残り120ヤードの第2打を9番アイアンで6メートルにつけ、ミドルパットを沈めてバーディー。16番パー5では、左ラフから残り120ヤードの第3打を9番アイアンで2メートルにピタリ。極端な前下がりのライを苦にせぬ会心のショットで、バーディーを奪った。最終的に5打差をつけた。

 昨季終盤から続いていた海外勢のツアー連勝を「8」で止めた。日本勢にとって、ワースト記録を更新中だった。

 「でも、ここで勝てたからといって、安心してはいけないと思います。韓国選手はどんどん調子を上げてくる。いい意味での危機感を持っていかないと」

 イ・ボミ、アン・ソンジュ、申ジエら同世代の韓流パワーを、いつも自分の指標にしている。今季の目標は日本女子オープン、日本女子プロなど国内メジャー優勝だ。特に日本女子オープンは14、15年と途中で首位に立ちながら、勝てずに終わった。

 「私の技術は、彼女たちにまだまだ及ばない。対等に戦うには、全体的なレベルアップが必要です」

 プレー中はほとんど表情を崩さない。クール・ビューティーで多くのファンを引きつける“アイス・ドール”が、笑みを消し、顔をきゅっと引き締めた。