「旅人ゴルファー」こと川村昌弘(24=antenna)が6バーディー、1ボギーでこの日ベストタイとなる67をマークし、通算4アンダーの140で首位と2打差の6位に浮上した。大会前の時点でギリギリ第2シード圏内の賞金ランク79位だが「旅するためにゴルフをしている」と公言する男らしく3年連続のシード確保にこだわる姿勢は全くなし。ただ目の前の試合で勝つために残り2日間に臨む。金庚泰(31=韓国)が通算6アンダーで単独首位に立った。

 最終戦はフィールドがわずか30人に絞られるとあって、多くの選手は今週がツアー競技を締めくくる一戦となる。賞金シードを巡って火花も散る会場で、瀬戸際ながら悲壮感と無縁の川村がいる。「気にしていなくても、周りが知らせてくれますよね。『あなた、ヤバいよ』って(笑い)。ゴルフの試合は(世界中)どこでもやってるし、今年ダメでも、この世の終わりじゃないんだから」と笑う。

 前半だけで4バーディー。後半に唯一のボギーをたたいた直後の7番パー5も第3打を1・5メートルに絡めて取り返した。「特にスーパープレーはないけど、これだけ追い込まれるとかみ合うもんだな、と」。仮にシード圏外にはじき出されたとしても、次週から始まる来季出場権をかけたQTに出場する気はない。掛け持ちするアジアツアーのモーリシャス・オープンに出るためだ。「海外が好きで、試合が好き。QTは試合じゃない。日本ツアーから一時的に離れることも覚悟していましたから」と言う。

 今季だけで15カ国を巡った。モーリシャスの後も南アフリカ、インドネシア、インドと転戦は続く。日本シリーズJT杯の切符を得ても予定は変えない。勝ちたいのは「家族とかスポンサーさんとかがホッとしてくれれば、うれしいから」。何より、プロゴルファーとしての本能でもある。【亀山泰宏】