男子ゴルフの石川遼(26=CASIO)が所属先の樫尾和雄会長の訃報に接し、悲痛な思いを口にした。

 樫尾会長は18日に誤嚥(ごえん)性肺炎のため89歳で亡くなった。石川は、ダンロップ・スリクソン福島オープン(21日開幕、福島・グランディ那須白河GC)に向けて練習ラウンド中の19日に知らされたという。最後に会ったのは昨年12月。「酸素吸入しながら、わざわざお話をしてくださって。心配していたんですが…。ショックです」と言葉を詰まらせた。

 13年から所属契約を結んでいる石川を厳しくも温かく見守ってくれる人だった。「一流企業の競争を技術力で生き残ってきた会社のトップのお方。『なぜ世界で通用しないのかということをもっと考えた方がいい。なぜだと思うことが大事だ』と。僕のゴルフも本当によく見ていてくださって、契約当初から、そういう(厳しい)ことも言ってくださる方だった。相手にとってプラスだと思ったら、ちゃんと伝えてくれる。悪い意味での気遣いとかはなく、単刀直入に。会いに行くたび『今日は会長に何を言われるかな』と緊張する感じもあったんですけど、お会いした後は、やっぱりお話しを聞いて良かったと思えたんです」と明かす。

 さらに「最大の恩」と感謝してやまないのが、16年のISPSハンダW杯ゴルフ。カシオ・ワールドオープンと同週開催にもかかわらず、松山英樹からパートナーの打診を受けた石川を快く送り出してくれた。「非常に悩みました。会長にも相談させていただいて。『英樹と組んで2人で世界一を取りたいんです』と。(相談自体が)ずるいんですけどね。それをトップとして、ゴーサインを出していただいた。それまで4年海外(を主戦場)でやっていて、年に1度のホスト大会に出られなくなる。それをも後押ししてくれた。世界でもトップの時計メーカーとして、世界に挑戦する姿勢を常に応援してくださった。感謝しかないです」と繰り返した。

 実は大きな後悔がある。「会長の前でカシオ・ワールドを勝てなかった」。樫尾会長もラウンドについて応援してくれた15年大会最終日、2位に3打差をつけて折り返したが、黄重坤(韓国)に競り負けて2位だった。再び2位となった昨年大会は、樫尾会長が体調不良で会場に来ることができなかった。「今年こそ会長の前で(勝つ)と思っていたので、まさかと思いました」。自らが思い描く形の恩返しはかなわなかった。それでも、世界で活躍することを願ってくれた恩人のため、目の前の試合を全力で勝ちにいく。