20年東京オリンピック(五輪)でメダルをねらう女子ゴルフ界に、新たな脅威が出現した。

タイの19歳、サランポーン・ランクンガセットリンが、67で回り通算15アンダー、273で初優勝を果たした。1打差2位から出て、5バーディーとスコアを伸ばし、2位の河本結、稲見萌寧に3打差をつけ逆転優勝。米ツアーの昨年賞金女王、アリヤ・ジュタヌガーンの出現など躍進著しいタイから強力なライバルが誕生した。

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日本ツアー1年目とは思えない、堂々たる勝ちっぷりだった。3番で最初のバーディーを奪うと「緊張から楽しいラウンドに変わった」と、バーディーを重ねた。6番で首位の河本に並ぶと、7番であっさり抜き去る。フェアウエーキープ率100%の正確なドライバーを武器に、伸び悩む河本、稲見らを尻目に後半に2つのバーディーを加え、3打差をつけ完勝した。

「日本ツアーは世界レベルのツアーだと聞かされていた。ここで戦えるということ、勝てたということがうれしい。私の夢が1つかないました」と、あどけない笑顔を見せた。

19歳217日での優勝。10代での日本ツアー初勝利は、18年の新垣比菜に次いで13人目の快挙となった。15歳でプロになり、17年、18年と中国ツアーで2年連続賞金女王。10代でアジアでもまれ、将来米ツアーを目指すランクンは、初挑戦の日本で早くも大きな実績を記した。

タイは今や、米ツアーでも欧米、韓国に匹敵する強豪国になりつつある。米ツアーで昨年の賞金女王で世界ランク1位になったアリヤ・ジュタヌガーンや姉のモリヤなど、有望な選手もどんどん出てきて、米ツアーに参戦する選手の数は日本以上と言われている。大企業が若手育成をサポートし、ゴルフ場で英才教育が施されている。ランクンもそんな環境で育ち、現在世界ランクはタイ国内で5~6位。今回の優勝でさらに上昇し、20年東京五輪出場の可能性も出てくる。

「来年の東京五輪は私の最も大きな夢の1つ。出場できることを楽しみにしています」と希望を口にした。東京五輪でメダル獲得を目指す日本にとっては、新たなライバルの出現だ。「最終的には米ツアーに行きたいが、まず日本で経験を積みたい」と将来を見据えながら、ランクンは日本でワザを磨く。【桝田朗】

◆サランポーン・ランクンガセットリン ツアー登録名はS・ランクン。1999年12月9日、タイ・バンコク生まれ。12歳からゴルフを始め、15歳でプロ転向。タイでプレーした後、16年から台湾、17、18年と中国で2年連続賞金女王となる。この大会前までプロ通算15勝。QTで32位となり今季から日本ツアーに参戦。父親のスラットさん(52)がキャディーを務める。166センチ、55キロ。得意はドライバー。