AIG全英女子オープン優勝の渋野日向子(21=RSK山陽放送)が通算19アンダーの269で、今季の国内ツアー4勝目を飾った。賞金女王争いをする首位鈴木愛との同組対決で66を出し、激闘を1打差で制した。

最終戦LPGAツアー選手権リコーカップ(28日開幕、宮崎)で単独2位以上ならミラクル戴冠を果たす可能性が出てきた。この日の最終18番では天候激変、突風が吹いてプレーオフの可能性があった森田遥が失速。不思議な“嵐を呼ぶ女”が、ツアー終盤戦を盛り上げる。

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プレーオフに備え、パッティンググリーンにいた渋野が万歳した。2組後ろの最終組にいた森田が、自分と並ぶ可能性が消えた。泣きながら“吉報”を伝える帯同の定由早織キャディーに、泣き笑いして抱きついた。賞金女王を争う鈴木との激闘の末、手にした優勝は格別だった。

ドラマは終盤に待っていた。17番パー5。1打差をつけていた鈴木が第1打を池ポチャ。優位に立った。ところが、自分の第2打もあわや池に消えかけた。池越えのグリーン左奥に切られたピンへ。残り217ヤード、5番ウッドの2オン狙いが、池の向こう岸斜面で止まった。「ドッキリしました。ボールがどこにあるかわからなくて」。水面まで約2ヤード。ツキを生かし、3オン2パットパー。ボギーの鈴木に2打差をつけた。

最終18番パー4では天気が激変した。第1打直後から、雨混じりの突風が発生。右ラフから、グリーンエッジまで残り111ヤードの第2打はピッチングウエッジ。クラブを2番手も下げてパーにまとめた。そんな“嵐”の影響をもろに受けたのは、渋野とトップで並んでいた森田。17番が猛烈な向かい風で、パー5なのに3オンできず、ボギー。1打後退した。前回優勝した9月東海クラシック最終日は最終組の7組前で出て、64の猛チャージ。ホールアウト後に天候が悪化し、8打差大逆転V。再び神様を味方につけた。

会見で「あ~息切れ」と切り出した渋野は言った。

「予選落ちはムダじゃなかった。初心に戻れた感じです。自分のためじゃなく、両親、コーチ、キャディー、ギャラリーのために頑張ろうと思っていました」。鈴木との同組対決は8試合11度目。鈴木は4度優勝につなげたが、自分は初めてだ。「技量、レベルは全く違う。何か、と考えたら気持ちかな。そこは負けないように頑張りました」と笑顔を見せる。

賞金女王の夢をつないだ。出場選手32人予定の最終戦で優勝すれば、鈴木が単独2位にならない限り、逆転戴冠となる。「いや~(賞金女王を)考えなくて勝ったんで」。最終戦までの2連勝で女王を決めれば、史上初。天も運も引き寄せた。“嵐を呼ぶ女”に不可能はない。【加藤裕一】

◆ルーキーイヤー4勝 88年ツアー制施行後、国内ツアー本格参戦1年目の年間4勝は渋野が4人目。04年宮里藍(5勝、賞金ランク2位)07年張娜(4勝、同5位)11年アン・ソンジュ(4勝、同1位)で、日本選手では宮里に次ぎ2人目になる。

◆来季賞金シードが確定 賞金ランク50位まで。初は渋野ら“黄金世代”が50人中11人となった。シード落ちは52位森田遥ら16人。51~55位は来季ツアー前半戦出場権があり、後半戦はリランキング次第。56~70位は1次QT(26日開幕、全国3カ所)免除で最終QT(12月3~6日、埼玉・こだまGC)から出場できる。

◆ツアー最終戦の優勝で決まった賞金女王 88年ツアー制施行後、95年塩谷育代、04年不動裕理、08年古閑美保、09年横峯さくらの4例のみ。

<渋野日向子の使用クラブ>

▼1W=PING G410 PLUS(シャフト=フジクラスピーダー569、硬さSR、10・5度、長さ44・75インチ)▼3W=同 G410(14・5度)▼5W=同 G410(17・5度)▼UT=同 G410(22、26度)▼アイアン=同 i210(5I~PW)▼ウエッジ=同 GLIDE FOGED(52、58度)▼パター=同 SIGMA 2 Anser▼ボール=タイトリスト プロV1