女子ゴルフの国内ツアーは熱い賞金女王争いが繰り広げられている。決着は28日開幕の最終戦・ツアー選手権リコー杯(宮崎CC)にもつれ込んだ。

賞金ランク1位の鈴木愛(25=セールスフォース)か、それとも初の女王の可能性を残した同3位の渋野日向子(21=RSK山陽放送)か。同2位の申ジエ(31=韓国)も交えた争いが佳境を迎える中、東京オリンピック(五輪)出場権も競う鈴木と渋野を「最終決戦」として2回連載する。第1回は2年ぶり女王返り咲きを狙う鈴木の渋野へのライバル心に焦点を当てた。

   ◇   ◇   ◇

春が終わり、初夏を迎える頃まで「しぶこ」のことは眼中になかった。鈴木だけではない。多くのトッププロがそうだった。5月の国内メジャー・サロンパス杯のプロ初優勝で渋野の知名度は全国区になったが、鈴木が認めるようになったのは8月になってからだ。

日本男女を通じ42年ぶりのメジャー制覇を達成したAIG全英女子オープンから帰国し、凱旋(がいせん)試合となった北海道meiji杯が開幕する前日(8月8日)のこと。渋野フィーバーとなり大勢の報道陣が詰めかけた。同じ全英で89位で予選落ちした鈴木は、クラブハウスの片隅で2~3人の記者に囲まれた。渋野を横目にしながら発した言葉は印象的だった。

「もちろん、すごいことだと思います」。そう前置きしたが、笑顔はなかった。真剣な顔でこう続けた。

「うらやましいけれども、それよりも、私としては悔しいという気持ちの方が100倍上回っています」

世界が“スマイルシンデレラ”と呼ぶ渋野に対し、鈴木は闘志むき出しのプレーが持ち味である。その姿は対照的だが、共通点は数字に表れている。ティーショットの平均飛距離は渋野がツアー12位、鈴木は25位。フェアウエーキープ率は鈴木が同37位、渋野が同40位。2人とも決してショットの数値は良くない。だが平均パット数(パーオンホール)は渋野が同1位、鈴木が2位。それを理解しているからこそ「パター職人」の鈴木はより一層、対抗心を燃やすようになった。

「比べてはいけないと思う。私は私。彼女がニコニコしているからと言って、自分がそのスタイルにする必要はない。パターに関しても彼女は強く打つ。でも私は全部が全部、強く打つ必要はないと考えている」

全英以降、芽生えたライバル心。それは賞金女王争い後も東京五輪出場が決まるまで続く。【益子浩一】