逆転賞金女王に挑む渋野日向子(21=RSK山陽放送)が、首位に3打差の3位発進した。

9番パー5でイーグルトライからまさかの4パットでボギー…。だが、11番パー5で“怒りのイーグル”を奪取し、2アンダーの70とした。4パットはメジャー制覇した8月AIG全英女子オープン最終日以来だった。

一気に注目を浴びた今季国内ツアー最終戦。賞金ランク1位鈴木愛、2位申ジエ逆転には、単独2位以上が前提で「なっさけねえ~」とこぼした4パットが、吉兆となるか-。

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追い風に乗った。左からの風に負けなかった。「もしかしたら、左に打ったら、いい感じに傾斜でピンに寄っていってくれるかも」と渋野は言う。11番パー5(485ヤード)、ピンまで残り202ヤード。4番ユーティリティー(UT)の第2打はグリーン手前に落ち、グリーン面のスロープを伝って、ピン右80センチについた。

イメージ通りのイーグル奪取、1アンダーとした。8月30日、ニトリレディース第2ラウンド(R)以来10試合31・5Rぶりとなる今季6個目。「先週とか、とれそうなチャンスあったけど、とれなかった。なんなら、イーグルパットでショートする場面が多かった。あれだけいって(ついて)くれたから良かった」。会心だ。ギャラリーは大歓声を上げた。ところが、渋野は帽子のツバに右手を添えただけ。笑わなかった。

怒っていた。9番パー5も2オンした。ピン奥10メートル。それが1・5メートルもショート。バーディーパットも外し返しの80センチも外した。4パットで、イーグルチャンスをボギーにした。「なっさけない。完全にミス、全然打てなかった。入れるつもりで打てばいいのに、寄せに行ってたのかもしれません」。頭に浮かんだのは、AIG全英女子オープン。「あの時(ダブルボギー)より、1打いいわと。『やっぱり(4パットは)やるんだ』と。でもあの時は強気で打って4パット。今回は弱気で4パットですからね」。自虐的に笑った。

おなかがすいて、8番で「抹茶味のピーナツ」「かむかむレモン」「かむかむレモンのタブレット」「赤からの10辛の豆」を食べた。渋野パターンだ。しかし、10番の第2打に向かいながら、リンゴとちくわを食べたのは「4パットのやけ食い」だ。暑がりとはいえ肌寒い中、長袖シャツ1枚でプレーしたのは、怒りに燃えたせいもある。

ツアー有数の難易度を誇る宮崎CCで風も吹いた。なのに初出場で2アンダー、3位発進。風を考え、高さ20~30メートルの松林の“壁”を生かす、低い球も打つなど、工夫をこらす21歳。「楽しむというより、ちゃっちゃっと終わらせたい」。女王奪取へ、単独2位以上でなければチャンスさえ生まれない。そんな戦いにも重圧がない。悪夢の4パットだが、渋野にかかれば“全英以来の吉兆”になるかもしれない。【加藤裕一】