今月から土曜日は「ゴルフ流 Education」。国内ツアー通算64勝、数々の名勝負を演じたゴルフ界の“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)の登場です。畑岡奈紗プロもアマ時代に指導を受けた「トミー・アカデミー」を主宰した経験も踏まえ、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。

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現代はスマホやタブレットなどデジタル機器は、ジュニア世代にもすっかり普及しています。「トミー・アカデミー」でも、食事中にスマホを手放さない子が多くて、最初はびっくりした。「スマホがなかったら生きていけない」なんて言う子もいる。中には家庭内では使用が制限され、その反動からか、外に出ると夢中になってしまうケースもあるようです。

僕は「デジタルは情報、アナログは想像力」と感じています。例えばゴルフの場合、インターネットで海外トップ選手のスイング動画やレッスンを見ることができる。自分の問題点をスマホで解決しようとする時代。僕らが育った時代にはなかったことです。

一方で“アナログ世代”はラウンド時の同伴競技者など、他のゴルファーのプレーを見て、想像力を駆使して、上達に結びつけました。観察して、想像力を膨らませ、考えて、学んで、いわゆる「技を盗む」ということもありました。それが試合やラウンドの楽しみでもありました。

今はそのデジタルとアナログのバランスが大事なときだと感じます。豊富な情報が与えられることは有益ですが、同時に子どもの想像力が損なわれないよう願っています。

実際に僕のジュニア指導では、ボールを打つことよりも、内面的なことの比重が増えました。技術的な部分は30~40%にすぎないでしょうか。用具の進化、スイング理論は刻々と変わります。体格や年齢によって個人差もある。だから、グリップなど普遍性のあること(基本)が指導の中心になります。あとは、プレーに向けての準備のやり方、体のつくり方、精神面のつくり方、成功した時の話、失敗した時の話、そうした経験などを伝えます。

そこから想像力をつかって、自分のものにしてくれるとうれしいですね。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月日本プロゴルフ殿堂入り。一方で12年から「トミー・アカデミー」を主宰し、畑岡奈紗らを育てた。静ヒルズCC所属