国内ツアー通算64勝、数々の名勝負を演じたゴルフ界の“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)による「ゴルフ流 Education」。今回は“世界のアオキ”青木功プロ、“ジャンボ”尾崎将司プロとともに、「AON時代」を築いた経験も踏まえて、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。

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スポーツに限らず、「ライバル=好敵手」という存在は必要、エネルギーを生み、人を育てる1つの要素になると感じます。

例えばゴルフの場合、昨年の全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝し、脚光を浴びた。先に、米女子ツアーで3勝していた畑岡奈紗選手は、さらに前進する刺激とエネルギーをもらったと思う。原英莉花選手ら、いわゆる女子プロ界の「黄金世代」は「私だって」と励みになったはずだ。

ライバルはできれば2人以上、自分を含めて3人以上の関係性があるといいと思う。ゴルフ界ならパーマー、ニクラウス、プレーヤーの「ビッグ・スリー」。僕らの時代は「AON」と呼ばれた。青木さんやジャンボに負けると、本当に悔しかった。

以前にテニスの大坂なおみ選手のコーチをしていた方が「勝負は勝つか負けるかではない。勝つか学ぶかだ」と話したと聞きます。価値ある相手に負けたことからは、学ぶことが多いという意味でしょう。

自分がライバルと認めた相手なら、負けても、悔しさや学ぶものは大きい。その意味で青木さんやジャンボと勝負した1分、1秒は宝物。代え難い価値がある時間だと思ってます。

一方で、ライバル事情には変化もあります。16年マスターズで当時22歳のスピースは、最終日12番の池ポチャなどで崩れて2連覇を逃した。それが、数週間後には同世代のライバルであるトーマス、ファウラー、マスターズ最終日に同組だったカウフマンと“傷心旅行”をしていたのです。負けた後に青木さんやジャンボと話せなかった僕らの時代とは違う。今は「ライバルであり仲間」という意識があることも、理解したいですね。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月、日本プロゴルフ殿堂入り。12年からジュニア育成を目的とした「トミー・アカデミー」を主宰。静ヒルズCC所属。