イーブンの8位で出た稲見萌寧(21=都築電気)が、昨年7月のセンチュリー21レディース以来となるツアー通算2勝目を挙げた。

5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算5アンダー、139。台風の影響で第2日が中止となった36ホールの短期決戦は、浅井咲希(22=小杉CC)、ペ・ソンウ(26=韓国)と並んだが、3人によるプレーオフ1ホール目で、4メートルのバーディーパットを沈めて優勝を決めた。

優勝の瞬間は、力強く右手でガッツポーズをつくった。その後、毎日のように一緒に練習する、高橋彩華に出迎えられて祝福を受けると、涙を流して喜んだ。初体験のプレーオフを振り返り「楽しかった。いい緊張感もあったし、どれだけ強い気持ちでできるか。(ウイニングパットは)入れる気満々でした」と笑った。

稲見は、自らを「はざまの世代」と呼ぶ。1学年上は畑岡奈紗、渋野日向子ら98年度生まれの「黄金世代」で、1学年下は古江彩佳、安田祐香ら00年度生まれの「ミレニアム世代」。両世代から今季は優勝者が出ており、国内メジャーの前週も、優勝は黄金世代の原英莉花だった。「同年代の選手が活躍する中、自分はかみ合わず中途半端。悔しい思いをしていた」と、トップ10入りが1度しかなかった前週までを振り返った。

そんな中、初のメジャー挑戦となった8月のAIG全英女子オープンは、通算14オーバーで予選落ちした。新型コロナウイルス感染症対策で、帰国後は2週間の自主隔離もあり「3試合、他の人よりも少なかったので、自分も早く取り返せるようにと、焦りで空回りしていたところもあった」という。だが時折、強風が吹いた今大会は、海からの猛烈な風に苦しめられた、その全英女子の経験が生きた。

「風をしっかりと、前よりも読むようになりました。行かないと味わえない経験だと思う。1回も後悔したことはない」といい、全英女子を「暴風雨」と表現したのに対し、今大会は「ゴルフ日和」。多少の風では動じない精神面の成長が、慎重に打ちたくなるプレーオフのティーショットでも「マン振りしました」という、強気のプレーにつながっていた。【高田文太】