渋野日向子(22=サントリー)が“恵みの雨”を追い風に、日本人初のメジャー2勝目に挑む。全米女子オープン最終ラウンドは13日午前9時10分(日本時間14日午前0時10分)、雷雲接近により中断。スタート前の渋野は3時間以上待機したが、悪天候とコース状態の回復が見込めず、14日午前8時25分(日本時間同日午後11時25分)スタートへ順延が決まった。天候を味方に優勝を重ねた実績に加え「気分転換になった」と、前向きにとらえた。

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天はまたも、渋野に味方しようとしているのか。スタートを25分後に控え、打撃練習場から仕上げのパッティンググリーンに移動して間もなく、中断を伝えるホーンが鳴った。雷雲接近で、クラブハウスに避難した。そこから3時間余り。順延が決まった。「ちゃんとスタートできる準備はしていた。気持ちもしっかりと引き締めていた」と、臨戦態勢は整っていた。一方で順延については「いい気分転換になった」と笑顔で話し、好材料ととらえた。

待機中はロッカールームのソファで、日本人選手で集まって談笑した。笹生優花が持参したブルーベリーとピーナツバターの「おいしいパン」(渋野)をほおばり、リラックス。前日の第3ラウンドは「足が5センチ浮いた状態」と振り返るほど、地に足がつかず緊張していた。74と崩れながらも、辛うじて2位と1打差で首位堅守。その第3ラウンド終了後は日が暮れても練習していた。最終18番でボギーの嫌な流れを断ち切りたい思いの表れだった。

順延が決定後は、前日とは一転、練習は一切しなかった。「(午後は)何しよう。ボーッとしてきます」と笑った。順延した14日は一気に冷え込む予報で「10度ぐらい違うということで、飛距離も変わってくる」と、一段とタフな戦いになることは分かっている。心身の疲労回復に努めることを最優先にした。 今年は未勝利だが、直近の優勝2回は、どちらも自身がホールアウト後に天候が激変し、強風の影響を受けた上位陣が崩れて逆転というミラクルが起きた。特に昨年9月のデサントレディース東海クラシックは、史上2番の最終日大差逆転優勝となる8打差をひっくり返している。「恵みの雨になりそうか」の質問には「どうなんですかね」と回答。ただ「明日は寒い予報なので今日の雨が乾くことはない」と続けた。天候が味方するというよりも、味方に付けるための準備を誰よりも念入りにしている。

米メディアの「GOLF.com」は、04年全英女子オープン女王スタップルズのコメントとして「順延で誰よりも恩恵を受けるのは渋野日向子です」と報じた。下降線だった流れを、再び上向きにできる絶好の機会を得たと説明した。渋野も「優勝したい気持ちはあるけど、目の前の一打に集中して私らしいゴルフが18ホールできれば」と語った。優勝に縛られず、吹っ切れた口調に力強さが戻った。