ともに日本人初のメジャー2勝目と、女子ゴルフ界随一の「全米女王」の称号は、2打及ばずこぼれ落ちた。首位で出た渋野日向子(22=サントリー)は、2バーディー、5ボギーの74と3つ落とし、通算1アンダー、283と失速。金阿林(キム・アリム、韓国=25)に、大会史上最大に並ぶ最終ラウンドでの5打差逆転を許し、目に涙をためて悔しがった。それでも不振にあえいだ20年の最終戦で、世界を再び驚かせた。東京五輪も行われる21年に向けて成長を証明した。

《渋野のスイング改造》

<佐伯三貴のスリーポイント解説>

渋野さんは4日間、すばらしいゴルフをしました。どん底の時期もありましたが、彼女の不振は技術的なものではなく、気持ちだと思います。それを(1)表情(2)言葉(3)パッティングの3点から見ていきましょう。

全米の彼女の表情は一喜一憂しないという感じで良かったと思います。ゴルフ自体が低迷していたときは、喜怒哀楽が出て感情をコントロールするのが大変なようでした。今回は自分のやっていることに確信が持てて、表情が良くなった。彼女なりに今年の目標をしたと思いますが、パズルでいうと、ピースがなかなかはまらない。現在もピースははまっていないけど、枠組みがちゃんと分かってきたのかなと思います。「これでいいんだ」という手応えみたいなものを、すごく感じていたんだと思います。最後のメジャーで、これに取り組むという課題もみつかったのかな。

私が、そろそろ大丈夫かなと思ったのは、TOTOジャパンクラシック最終日をノーボギーで回った時。それぐらいから発言が変わってきた。今大会もポジティブな発言で、勝つ気持ちを結構出してきた。有言実行とまではいかなくても、自分を鼓舞して良い形で終われたと思います。

渋野さんはパッティングで流れをつくる選手。今週は前半は強気のパットが戻っていました。でも、第3日、最終日はパーパットはしっかり打てていたけど、バーディーパットで守っていたのかなと思います。ショットとかは普通に取り組めば問題ない。今後は自分のパッティングを迷わずに確立して欲しい。

昨年優勝した全英女子オープンのときは1番から全部バーディーでいくんだという攻めの気持ちで戦った。あのゴルフが100点満点とするなら、それ以上はなかなか難しい。そこを目指すのではなく、平均60~70点で戦い切れるために、気持ちの面で強くいけたらと思います。全英は何か分からないうちに勝ってしまった。今回の方は、緊張した中で、優勝を意識してプレーした。ゴルフが楽しかったかと言ったら、楽しくなくて苦しかったと思うが、それがこの先の糧になる。海外メジャーで4日間これだけの優勝争いをして、日本人の複数回メジャー制覇が夢ではないと思わせてくれました。(プロゴルファー)

《「絶対ここでまた戦う」一問一答》

《しぶコーデ》