日本男子プロゴルファーが何十年も、何十人も挑み続けながら、届かずにいたメジャー制覇-。その松山英樹の偉業と「心技体」について、米ツアー3勝を挙げながら、02年全英オープンで1打差5位、04年全米オープン4位と涙をのんだ丸山茂樹(51=セガサミーホールディングス)に語ってもらった。

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ショットも小技もかみ合った今回の松山のプレーについて、まず丸山は「スイングがここ2~3週間で変化したように感じた」という。「バックスイングでのトップが、13~15年の位置に戻ってきた」。13~15年は松山にとって日本ツアー賞金王から米ツアー進出、同ツアー初勝利の飛躍期といえる。アイアンショットについては、「多少左右にぶれても距離感が抜群にいい。これは以前から米ツアーでもトップ3に入ると思っていた」。よって、仮にグリーンを外したとしても、リカバリー可能な範囲にとどめられた。

さらに今回は小技が光った。「彼のフィーリングとイマジネーションの高さ」。最終日後半こそボギーが増えたが、そこまでは1パットパーでしのぐ場面が、スコアメークを支えていた。これらの要素を引き立たせたのがパットで、「リズムに一定感があり、注目していた」と話す。

優勝につながる最終日の鍵の1打については、象徴的な場面として「1番で第1打をミスして(ボギー)の後、2番のティーショットをフェアウエーの好位置に運んだこと。5番の(約6メートルの)パーパット」を挙げる。

淡々とした表情でプレーしてるような松山だが、丸山は「スイングを見ても、プレッシャーがかかっているのは見てとれた」とプロならではの視点で語る。「でも、彼はプレッシャーがかかった時、どう対応すればいいのか、自分でわかっていると思う。最初から精神面が強いというより、対処法を知っている」。まるで頭の中に、もう1人の自分というメンタルコーチがいるように。かつてパーマーやプレーヤー、ホーガンの時代にメンタルコーチは少なかった。自分で解決してきた選手こそ「メジャーに勝てたんでしょう」。

丸山は松山の「体」の部分では「以前のようなストイックでハードなトレーニングは減って、最近はメンテナンスの方が増えていると聞いている」と明かす。練習熱心で知られる松山だが、鍛え続けるのは一段落で、年齢に応じて故障防止の意味も含め、練習量も減らしているそうだ。

さらに松山のマスターズへの思いについて。「アマで出場した時、『通用しそうだ』と手応えがあって、『(将来)勝てる』と思ったんじゃないかな」。早くにプロになり、すぐに米ツアーに主戦場を移した。「僕らの時代とは違った」。それが偉業達成の一因でもあるとみている。