上田桃子(34=ZOZO)が通算5アンダーの211で並んだ同郷出身で名前も同じ大里桃子(22)をプレーオフの末に下し、約2年ぶり、自身通算16度目の優勝を飾った。

今月に入っても涙を流すほどの不振に苦しんだ。持ち前の闘争心も失いかけたが、キャディーを務めた辻村明志コーチ(45)と1週間前に緊急強化合宿を敢行。基礎を見つめ直すことで、スランプ脱出に成功した。2年ぶりの優勝で、次週の国内メジャー、ワールド・サロンパス・カップ制覇にも弾みをつけた。

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勝負師の勘が光った。パー3の9番でのプレーオフ。1ホール目は上田が1メートルを楽々決めたのに対し、大里は4メートルを何とかねじ込んでパー。ガッツポーズで勢いづく後輩を目にし「次はバーディーをとる気持ちでいかないとやられると思った」と引き締めた。

最大瞬間風速20・2メートルを記録する暴風が吹き荒れる中、2ホール目は少し風が緩んだ。キャディーの辻村コーチには1番手下げた6番アイアンを勧められたが「これがいい気がした」と引き続き大会最終日だけ入れていた5番アイアンを選択。緊張感の走る場面でグリーンへ乗せてパーとすると、ショットをバンカーへ打ち込んだ大里がボギーとなり勝負が決まった。

ツアー通算16勝の中でプレーオフで勝つのは今回で5回目。同じ熊本県出身で名前も同じ“桃子対決”を経験の差で制すると、両手をあげて笑顔をみせ、辻村コーチと握手を交わした。強風の影響でこの日の出場60人中アンダーパーは3人のみ。自身も首位に2打差で出てバーディーなし、1ボギーの73だった。「バーディーがひとつもなくて勝てるのも本当に珍しい。我慢していればいいことがあるなとわかりました」と笑った。

原点回帰の勝利だった。近年は「今までなかったミスをするようになった」と絶対的な自信を誇ったショットが不安定に。結果が出ない中で悩み、2週前の地元開催のKKT杯バンテリン・レディース後に辻村コーチに「勝てる気がしない」と涙ながらに相談した。コーチの発案もあり、1週前の土日に2人で茨城・大洗のゴルフ場で2日間の合宿を敢行。辻村コーチから「大人のゴルフをしようとしているように見える」と声をかけられ、5~10ヤード刻みでショットを打ち分けるなど、基礎練習を徹底的に反復。自信を取り戻し「それが今日、こういう大事な場面で生きました」と振り返った。

次戦の国内メジャー、ワールド・サロンパス・カップ制覇へ勢いをつけた。今年2勝の妹弟子、小祝ら若手の台頭が目立つが、まだまだ情熱は失っていない。「これからも年齢関係なく、勝つための姿勢は見せ続けていきたい」。上田の表情がまたひとつ引き締まった。【松尾幸之介】

◆上田のプレーオフ 今大会含め11度経験しており、通算成績は5勝6敗。賞金女王を獲得した07年にキャリア最多の5度のプレーオフを戦い、リゾートトラスト・レディースでは不動裕理、スタンレー・レディースでは横峯さくら、有村智恵との戦いを制した。直近は17年のKKT杯バンテリン・レディースで、西山ゆかりと戦い、敗れている。