<こんな人>

新世紀世代の笹生優花(19=ICTSI)が畑岡奈紗(22=アビームコンサルティング)とのプレーオフを制し、大会史上最年少の「19歳351日」で日本女子3人目のメジャー制覇を成し遂げた。取材で接した笹生の人柄とは。

10代のあどけなさを残しつつも、冷静で強い意思を持った選手だ。今季へ向けた昨オフのインタビュー。ドリンクは、りんごジュースを頼み、趣味の話を聞くと弟妹と卓球をすることや「黒子のバスケやドラゴンボールが好き」と言う。「スーパーサイヤ人になって孫悟空と同じ力を持ってみたいんですよね」と笑っていたが、ゴルフの話になると表情は変わった。

夢は「世界一になること」だとはっきりと言った。元世界ランキング1位でLPGA最多8度の賞金女王を誇るアニカ・ソレンスタムを引き合いに出し、「彼女のレコードに近づきたいという気持ちは持っています」と語っていた。

ゴルフにはひとつの信念を貫く。取材では口癖のように「ゴルフを楽しむ」と繰り返す。これには父、正和さん(63)の教えがある。笹生が小学生の頃。今でこそ冷静だが、当時はミスで機嫌を悪くし、キャディーとけんかをすることもしばしばあった。ある日、そんな姿を見た父から「そういうのは良くない」と諭された。以降は気持ちを入れ替え「ゴルフはミスのゲームだから、ミスをしてもしなくてもゴルフ全体を楽しむというようになりました」。プレーの成否に関係なく、ゴルフ自体を楽しもうと心がけるようになった。その姿勢は、この日のウイニングパットを沈めるまで貫かれていた。

取材の最後に、色紙に書く今年の意気込みを聞くと、1度は「世界一」と書きかけた。しかし「やっぱりこれは世界一になってから書きたい」とやめ「自分らしく」としたためた。「メジャーはいつ勝てるかわからないですからね…」とこぼしていた少女が、あれからわずか半年後に世界最高峰の全米女子オープンを制した。これで念願だった米ツアーのレギュラーメンバー入りの権利も獲得した。日本とフィリピンで育った異色の経歴を持つ笹生はどの色にも染まらない。自分らしく、成長はまだまだ続く。【松尾幸之介】

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