スコット・ビンセント(29=ジンバブエ)が第1ラウンドから首位を守り通す完全Vでツアー初優勝を手にした。最終日は4バーディー、ボギーなしの68。通算17アンダーとし、石川遼を1打差で振り切った。

最後はドキドキだった。後続を2打リードして迎えた最終18番パー5で、ビンセントが第1打を左に曲げた。「左だけはダメ。左以外ならどこでもいいと思ったのに、左に行った」。OBゾーンがあった。半ば諦めて暫定球を打った後、セーフとわかり「ビックリした」という。第2打をフェアウエーに出し、3オンに失敗したが、アプローチを80センチに寄せた。

「これぐらい(80センチ)より、もっと長く感じた」と、ちゃめっ気たっぷりに両手を左右いっぱいに広げて「入ってくれて、ホッとした」。ツアー初優勝のプレッシャーは大変だった。

将来的な米ツアー挑戦を見越し、そのステップとして、19年から日本ツアーに参戦した。来日前から約4年間、妻ケルシーさん(28)をキャディーで帯同する。同じ米国のバージニア工科大出身。サッカー選手のケルシーさんを試合で見て一目ぼれした。「彼女はベスト。心強い。すぐ先のことばかり考えてしまう自分を、目の前のことに集中させてくれる」。ゴルフをしない。誘っても乗ってこない。だが、キャディーとして距離計算、風の読みを完璧にこなすという。

21年のゴルフ人生はいいことずくめだ。「人生で最も最高の時間だった」と東京オリンピックにジンバブエ代表として出場。そして、日本ツアーでジンバブエ人では99年サントリーオープンのニック・プライス以来の優勝。「結果を重ねて、世界ランキングを上げて、米ツアーに挑戦したい」。サクセスストーリーが急展開し始めた。【加藤裕一】