元賞金王のベテラン藤田寛之(葛城GC)が52歳のシーズンも、存在感を見せ始めた。

「最近、同世代からやたらと“まだまだレギュラー(ツアー)で頑張って下さい”って言われる。逆に“シニア(ツアー)には出ないんですか?”って期待しているようにも言われて。いったい、どっちやねん!」。藤田は笑いながらそう言った。レギュラーツアー(以下ツアー)・Sansan KBCオーガスタ第2日の8月27日、首位と3打差7位で決勝ラウンド(R)進出を決めた時だ。

同大会は決勝2日間で急降下して67位に終わった。前週のセガサミーカップも第3Rでボギーなしの65を出して8位に浮上したが、最後は37位。今年はツアー出場11戦でトップ10がない。いいパフォーマンスが続かない。「以前は(スコアを崩すと)めちゃくちゃ怒ってたのに、今は“しょうがねえよな”と思っちゃう」。藤田いわく「おっさんの寂しさ」はそのへんにあるのだろう。

苦笑い混じりだった顔が、大先輩に話が及ぶと輝いた。

杉原輝雄さん。162センチの小さな体でAONに牙をむき、戦い続け、永久シード選手になった。世界主要ツアーの最年長予選通過記録「68歳10カ月」や、中日クラウンズで51年連続出場という同一大会の世界記録を打ち立てた。97年に前立腺がんを告知されると「戦えなくなるから」と手術を拒否、投薬治療を選択した。11年12月、74歳で他界するまで“生涯現役”であり続けた人。

今更ではあるが「杉原さんはすごい」と言った。

「プロとして、ああいう姿もあると教えていただいた。勝てなくなっても、見に来る人がいた。何かを感じて、あこがれて、杉原さんの生きざまを見に来る人がいた」。杉原さんは大雨で競技が中断されて、クラブハウスに入れないギャラリーが途方に暮れていると、練習場に出向き、黙々と球を打ち続けた。「そうでもせんと、お客さんに失礼やろ?」-。そんなプロ根性に強い共感を覚える年になった。

もちろん、勝つことを諦めたわけじゃない。「今年は前半が悪すぎましたからね。今は惜しいところまでは来てるんです」。ツアー通算18勝目を挙げた14年9月ダイヤモンドカップから7年たった。45歳から52歳になり、24季連続シードで迎えたシーズン。尾崎将司、杉原、中嶋常幸、プラヤド・マークセン、谷口徹、青木功、金井清一。国内男子ツアーで過去7人だけの50代優勝へ。藤田は頑張っている。【加藤裕一】