17日に30歳の誕生日を迎えた石川遼(CASIO)が、20代最後のラウンドで好発進した。4バーディー、ボギーなしの68で回り、4アンダーの13位。7アンダーで首位のジェイブ・クルーガー(南アフリカ)とは、3打差につけた。07年に15歳245日で史上最年少ツアー優勝を果たし「ハニカミ王子」と呼ばれて以来、注目を集め続けた石川も大台に突入。熟練の技術で30代初優勝を目指す。

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前戦まで2戦連続2位の好調そのままに、石川が好スタートを切った。2オンに成功した最終9番パー5は、決められなかったがイーグルパットを30センチ足らずにピタリ。「お先」と、楽々4つ目のバーディーで締めた。首位と3打差と2年ぶりの通算18勝目を狙える13位。20代最後のラウンドの感想を問われると「忘れてた、完全に」と笑った。続けて「恵まれた環境で経験を積めた。いい20代だった。でも、まだ何も成し遂げていない」と語った。勝利への欲求は、30代を目前に、最高潮に達していた。

その証拠に、今大会からボールとパターを替え、7番ウッドを抜いて新作のユーティリティーを入れた。今季は、よりコースに合うクラブを求め続けた。ユーティリティーは今週から日本ツアーで解禁されたばかりで、誰よりも早く実戦投入。17番パー5の第2打は「目の前の林がギリギリかと思ったけど、うまく越えることができた。すごくいいクラブ」と2オンに成功し、バーディー。20代最後もレベルアップを感じた。

アマチュアだった杉並学院高1年時の07年5月、彗星(すいせい)のごとく現れ、ツアーで初優勝した。「ハニカミ王子」の愛称で一躍スターになった。18歳の09年には賞金王、10年5月の中日クラウンズ最終日に世界最少ストロークのギネス記録「58」をマークした。激動の10代を経て20代は米ツアーにも挑戦。腰痛などに苦しんだ時期もあったが、8勝を挙げた。「今こうやっていい体の状態で30代を迎えられそうで、それがまずは大事。それがベースとなって初めてゴルフに打ち込める」と、しみじみ話した。

20代最後の2戦連続2位で、完璧を求める姿勢に磨きをかけた。「ボギーをゼロで終えられたことは、すごくよかったけど(ティー)ショットがもう少し、アイアン(第2打)がまだまだ。早く修正したい」。プロ14年目。優勝に必要な技術を逆算できるようになった石川は、30代初優勝をはっきりと見据えていた。