矢野東(44=ラキール)が、13年ぶりツアー通算4勝目へ、首位と2打差の2位と好位置につけた。3位から出て6バーディー、1ボギーの67で回り、通算13アンダー、203。16年のレオパレス21ミャンマー・オープン以来、5年ぶり6度目の最終日最終組となった。若手のころから変わらないイケメンぶりと同様、プレーも若々しい切れ味が戻ってきた。大槻智春が15アンダーで首位に立った。

   ◇   ◇   ◇

最終18番パー4で、1メートル足らずのパーパットを沈めた矢野は、ホッとしたように両膝を軽く曲げた。爽やかな笑みを浮かべながら、同組で回った選手、キャディーとグータッチ。実に13年ぶりの優勝へ、2打差2位で最終日は最終組で臨むことになった。「明日(最終日)は、まあまあ、のんびり。流れさえくれば、なんとかなる。我慢」と、ベテランらしく気負わずに話し、マイペースでプレーできるかをカギに挙げた。

1番パー4で第2打を1・5メートルにつけ、幸先よくバーディー発進した。ともにパー5の5番と12番は、第1~3打をミスしても、長いパットを決めてバーディー。苦しみながらも修正して伸ばし続ける姿は、矢野のゴルフ人生を象徴していた。するとショットも上向き、14番パー4は第2打を3メートル、15番パー3はティーショットを2メートルにつけ、バーディーを重ねた。「スコアが良かっただけで内容はひどかった」と苦笑いしたが、08年大会を制した得意コースで復調気配がある。

05年に28歳でツアー初優勝と、もともと遅咲きだった。08年は2勝を挙げ、賞金ランキング2位。だがその後、現在まで13年、優勝から遠ざかっている。特に最近10年でトップ10入りは8度だけ。17年6月には、痛みがありながら「3年くらいだましだましでやっていた」という右肘を手術した。「内視鏡で5本穴を開け、術後に見た時に太ももぐらい腫れていた」。繊細な感覚を取り戻すのに時間はかかったが、2戦前のKBCオーガスタは、4年ぶりトップ10入りの4位。この日も後半など随所で切れ味鋭いショットを見せた。

「明日も目標スコアは4アンダー。もう1回、68で回れれば、今年のANAオープンは100点かな」。ギラギラとした闘争心があふれ出ていた、30歳前後のころとはひと味違う。ベテランとなり、穏やかな表情でもファンを魅了する矢野が、無欲で最終日に臨む。

◆矢野東(やの・あずま)1977年(昭52)7月6日、群馬県生まれ。10歳でゴルフを始め、日大時代は全日本学生選手権、全日本学生王座決定戦などで優勝。00年にプロ転向。01年に下部ツアーで2勝し、02年からツアー本格参戦。05年アサヒ緑健よみうりメモリアルでツアー初優勝。08年はANAオープン、ブリヂストン・オープンと2勝し、獲得賞金1億3706万4052円でランキング2位。176センチ、73キロ。

◆国内男子ツアーの長期ブランク優勝メモ 

最長 2度の優勝の間隔が最も長いのは長谷川勝治で13年82日。33歳だった80年3月30日に静岡オープンで初優勝し、次の優勝は47歳の93年6月20日のよみうりサッポロビール。通算2勝だった。

2番目 次に間隔が長いのは、同じく通算2勝の横田真一で13年19日。25歳だった97年9月21日の全日空オープンで初優勝し、2勝目は38歳の10年10月10日のキヤノンオープン。今大会は現在33位で3勝目を挙げれば、史上初の2度目の10年超の優勝ブランクとなる。

矢野 通算3勝目の前回優勝が08年10月26日のブリヂストン・オープン。今大会優勝で、厳密には12年328日となる。