男子ゴルフの松山英樹(29=LEXUS)が、日本で、日本のファンの前で5年ぶりの優勝に挑む。2年ぶりに日本で開催される米男子ツアー、ZOZOチャンピオンシップ開幕前日の20日、会場の習志野CCで18ホールの練習ラウンドを終えた後に会見。開口一番「2年ぶりの習志野でのプレーは、すごく楽しみですし(今夏の東京)五輪は無観客ということで、ファンの皆さんの前でプレーすることができなかったですけど、今回(新型コロナウイルス感染症対策で観衆は各日5000人の)、上限はありますけど、ファンが来てくれることを信じて、いいプレーを見せられるように頑張りたい」と、日本のファンに向けて語った。

4月のマスターズで、3年8カ月ぶりに優勝するなど、主戦場は米ツアーとはいえ、日本のファンのことは常に気にかけてきた。米ツアーの合間を縫って、主に冬場などに国内ツアーにも出場しており、最後に国内で勝ったのは16年11月の三井住友VISA太平洋マスターズ。昨年以降は、新型コロナウイルスの影響で、国内での試合出場は東京五輪のみ。「(今回の日本開催は)難しい判断だったと思うけど、いいプレーを見せられるようにすることが大事だと思う。体調は、ちょっと時差ぼけがあるぐらい。ゴルフの状態は正直、かなり悪い状態ですけど、日本でのプレーですし、いいプレーができるように、しっかりと残りの時間を有効に使っていきたい」。日本人初のマスターズ王者となって以降、事実上、初めて日本のファンの前でプレーする“凱旋(がいせん)試合”へ、直前まで最高の準備をすることを約束した。

予選ラウンドは、その“凱旋(がいせん)試合”にふさわしい組み合わせとなり、気持ちも高ぶっている。同組は東京五輪金メダルのザンダー・シャウフェレ(米国)と、同じく銅メダルの潘政■(■は王ヘンに宗)(台湾)。特にシャウフェレは、マスターズ、東京五輪でも同組で回り、互いに刺激し合い、好プレーを生み出す相性の良さもある。松山も「本当にいいプレーをお互いできると思いますし、明日(21日の第1ラウンド)もそうなるように頑張りたい」と、1勝1敗で迎える名勝負第3戦を予感したように話した。

何よりも今大会は、初開催の2年前にやり残した、大きな忘れ物がある。2年前、タイガー・ウッズ(米国)との優勝争いに敗れて2位。ウッズはこの優勝で、米ツアー最多に並ぶ通算82勝目を挙げた。この日、2年前を思い出しながら「タイガーと優勝争いするのは貴重な経験だったし、何とか82勝目を阻止するように(順延で持ち越された)月曜日の最後の6ホールは、すごく頑張ったつもりだったけど、全然及ばなかった。いろんなマネジメント、こう攻めるとか、すごく勉強になったと感じた」と語った。成長につながった面もあるが、悔しい経験として心に残っている。

コロナ禍で昨年は米カリフォルニア州で行われた今大会が、再び日本で開催され、出場が正式に決まった際には、2年前の2位と比較し「順位をもうひとつ上げること」、つまり優勝を目標に掲げた。この日も「いいプレーができれば、優勝のチャンスはあると思う。自分のベストなプレーをすることが一番大事。そうなるように頑張りたい」と、自信をのぞかせた。

この日は、今田竜二、金谷拓実、久常涼と、笑顔を交えて練習ラウンドを行った。最終確認を終え「ティーショットはフェアウエーに置かないと、セカンド以降は難しい状況になると思う。グリーンもかなり速く仕上がっていると思うので、よりフェアウエーからのショットは求められる。ティーショットとグリーン周りは大事かなと思っています」と、2年前の経験に、新たな情報を上書きした。19日午前3時に、米ツアーで手配したチャーター機で他の選手、キャディーら120人以上とともに帰国。コロナ禍での特例での大会出場だけに、米国からの出国、日本への入国の審査にも時間を要するなど、苦労も多かったが、2日間、随所に笑顔を見せる松山。日本のファンの前で、メジャー王者としてプレーする瞬間を、心待ちにしている。【高田文太】

◆マスターズ後の松山 14試合に出場し、トップ10入りは4位だった東京五輪を含めて3試合。五輪の最終ラウンドから4日後に開幕した世界選手権シリーズのフェデックス・セントジュード招待でプレーオフの末に2位と惜敗したが、これが最高成績。他は21-22年シーズン開幕戦となった9月のフォーティネットの6位。この間、予選落ちと棄権が各1試合。また20-21年シーズン最終戦で、年間成績上位30人が出場できる9月のツアー選手権に8年連続で出場したが、年間成績は26位に終わった。

 

<前半9ホールを松山と練習ラウンドで回った金谷拓実>やっぱり見て学ぶことは多い。1つ1つのしぐさや、考えて練習している姿は本当にすごいなと思う。あれだけの選手でもいろいろ考えている。自分も、もっと考えて努力しないといけない。

<初対面の松山と練習ラウンドを18ホール回った19歳の久常涼>生で松山さんを見るのが初めて。ずっとテレビの中の人だった。すごく緊張しながらのラウンド。テレビだと怖い人かと思ったけど、世界一の人はすごく優しかった。「ああ、人間なんだな」と思った。夢のようだった。

<松山と一緒に18ホール回った米ツアー通算1勝で5年ぶりに試合出場の今田竜二>たまたま(今大会を中継する)テレビ朝日の仕事で日本に帰ってきて、チャンスをいただけました。正直、ほぼ練習もしていなくて、コロナ禍でゴルフ自体あまりしていなかったので、今の状態が分からない。とにかく楽しくプレーしたい。