松山英樹(29=LEXUS)が、代名詞のショットで首位に躍り出た。首位と1打差の2位から出て3バーディー、1ボギーの68と2つ伸ばし、通算8アンダー、132。2日間合計で出場78選手中71位の63パットを要しながら、ダントツのパーオン率88・89%という高いショットの精度でファンを沸かせた。この日までに最終日の入場券はほぼ完売。日本での試合では5年ぶりとなる、優勝を期待する機運が高まってきた。

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雨にも負けず、風にも負けず、気温11度と冬のような寒さにも負けず、松山が首位に立った。最初に観衆を沸かせたのは、前半の13番パー3。雨と寒さで飛距離が落ちることを計算し、ティーショットを1・5メートルにピタリとつけ、最初のバーディーを奪った。折り返しの18番パー5はピンの見えない位置から2オン。大歓声が起きた。8メートルのイーグルパットこそ外したが、40センチにつけて楽々バーディー。17番を3パットでボギーの嫌な流れを、持ち前のショット力で取り返した。

2日間36ホールのうち32ホールでパーオンと、安定感は抜群だ。パーオン率88・89%は、順位も2位のトリンゲール(米国)の77・78%を大きく上回る。2日間合計63パットは、最少50パットのクラーク(米国)よりも13打も多い。上位陣とは軒並み5~11打も、余分にグリーン上で費やした計算だ。その差をグリーン以外でひっくり返し「グリーンにセカンドショットが乗っているというのが1番大きい。ボギーはもったいなかったけど、その他は十分。明日(第3日)につながる」と胸を張った。

パットは1日で劇的に良化することもあるだけに、下地となるショットの安定は、優勝の可能性を大きく引き上げる。日本の試合では16年の国内ツアー、三井住友VISA太平洋マスターズ以来の優勝が現実味を帯びてくる。貴重な場面を見逃すまいと、松山の成績に連動して、第1日終了後から入場券が売れた。今大会は新型コロナウイルス感染症対策で、観衆は各日5000人が上限だが、24日の最終日はほぼ完売だ。

しかも特別席での観戦が可能なプレミア入場券は、実に5万8000円と高額だが最終日は完売した。国内ツアーでは5000円前後が主流。飲み放題と食べ放題が付いても1万円の大会もある。松山の日本での優勝に、それだけ価値を見いだす人が多い。

この日も4533人が駆けつけ、松山も「雨が降っていて気温も低いので、もっと少ないと思ったけど、これだけ来てくれた。その分、集中力を切らすことなくできた」と感謝した。さらに「いい位置で週末を迎えられる。最終日、面白い位置で回れるように頑張りたい」と続けた。優勝への期待の高まりを、誰よりも感じている。【高田文太】