松山英樹(29=LEXUS)が見せた、ショット後のジェスチャーに何度も惑わされた。

24日まで千葉・習志野CCで行われた、米ツアーのZOZOチャンピオンシップ。象徴的だったのは、23日の第3日、14番パー5の第3打の後だった。松山は打った直後にクラブから手を離し、両手で頭を抱えていた。その動きだけを見たら、よほどのミスショット、少なくともグリーンはとらえていないと思っていた。だがボールはピンまで4メートル余りのグリーン上。バーディーチャンスにつけていた。

結局、このホールはバーディーこそ逃したが、危なげなくパーだった。このシーンだけではない。大会4日間のうち、まるでミスショットのジェスチャーをしながらも、フェアウエーやグリーンをとらえていることは多々あった。

何よりも開幕前に「マスターズを10としたら1もない状態」と、不調を訴えながらも優勝した。優勝会見でも状態について「2か3ぐらい。結果としては8ぐらいまで行ったけど、残り5ぐらい上がった要因は応援」と語っていた。日本のファンのおかげで好成績を収めたが、調子そのものは4日間戦っても、大きく改善されなかったという自己評価だ。優勝した4月のマスターズと比較すると、2~3割程度までしか戻っていない感覚だった。

大会後の今、振り返ってみると、この「感覚」に、ズレが生じていたように思う。頭を抱えていた第3日14番の第3打も、一般的にはナイスショットの部類の4メートル程度だったが、伸ばしたいパー5。松山はもっと近く、1、2メートルにつけたかったはずだ。その1、2メートルの誤差が許せなかったのだろう。

バーディーやイーグルまでの道のりを計算し、イメージする。そのイメージと1、2メートルの誤差が続き「不調」と、とらえているのかもしれない。それだけ繊細で、究極の感覚の中で戦っている。

2つ伸ばして68で回った、その第3日のホールアウト後に「日に日にショットが良くなっているように見えますが、手応えは」と聞いた。すると「そう見えるなら、それでいいんじゃないですかね」と返ってきた。優勝してもなお、本調子の2~3割ととらえていたことを明かしたのだから、この時点で手応えはなかったのだろう。一般的な感覚の私からしたら、好プレーに映ることは否定せず、でも自分としては肯定できるほど手応えを感じていない-。だから、このような回答になったのかと、今にしてみれば感じる。求める理想の一端を、垣間見た気がした。【高田文太】