渋野日向子(22=サントリー)が驚異的な粘りで、3週間前にもプレーオフを戦った因縁のペ・ソンウ(韓国)との再戦を制した。

正規の18ホールは5バーディー、3ボギーの70で回り、通算9アンダー、207。先行するペに最終18番で2打差から奇跡的に追いつき、プレーオフに突入。1ホール目で鮮やかなイーグルを奪い、競り勝った。3週前に続く今季2勝目、日米通算7勝目。攻めの姿勢を貫く“おもしろいゴルフ”に会場は沸いた。

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神がかり的な渋野の劇的優勝だった。プレーオフ1ホール目の18番パー5。残り220ヤードからの第2打は、ピンそば3メートルにピタリと止まるスーパーショット。このイーグルパットを落ち着いて決めると、しぶこスマイルで力強く右手を握り、ガッツポーズ。大勢のギャラリーから祝福の歓声が上がった。

「見ている側からすると、ハラハラドキドキするようなゴルフだったと思う。おもしろいゴルファーになりたいと思っているので、おもしろい勝ち方ができてうれしかった」

土壇場で追いついた。ペ・ソンウに2打差で迎えた最終18番。「17番でソンウさんがバーディーを取った時点でギアを入れた。イーグルを取るしかないと思っていた」と2オンに成功。約7メートルのイーグルパットは外したが、バーディーを奪い、ペに重圧をかけた。ペは決めれば優勝という約1メートルのウイニングパットを、まさかの失敗でボギー。攻めの姿勢を貫く渋野の気迫が、ペの手元を狂わせた。

前週予選落ちからの優勝は、19年大王製紙エリエール・レディース以来2度目。当時は強風で他選手が崩れての勝利だった。同じ神がかりでも今回は安定したショットを武器に、実力で勝利をもぎ取った。

プレーオフは3戦3勝と無敵だ。3週前のスタンレー・レディースは無観客だったが、今大会は有観客。声援も味方に付けた。「パットを外したらため息も聞こえるし、バーディーを入れたら『ナイスバーディー』って聞こえる。やっぱり見てもらえている中でやるのがすごく楽しい。緊張するけど、見えない力があるのかな」。ギャラリーの声援も劇的勝利を後押しした。

この日は母の伸子さん(53)が見守った。伸子さんの前で初めて優勝したのも、プレーオフを制して優勝した2年前の資生堂・アネッサレディースだった。「あの時とまた違う自分を見てもらえたかな。恩返しになったかなと思うし、まだまだ足りないかな」。副賞は三菱電機の家電製品100万円分が贈られる。「冷蔵庫ありますかね。これで買えたらうれしい」と無邪気に喜んだ。

12月には米ツアー予選会に臨む。その直前で、出場を悩んでいた最終戦のツアー選手権リコー杯(宮崎、11月25日~28日)は「出ない方向でいきます。体力が持ちません」と欠場を明言した。国内ツアーで“おもしろいゴルファー”渋野は、あと3試合で年内見納めとなる。【近藤由美子】

◆渋野日向子(しぶの・ひなこ)1998年(平10)11月15日、岡山市で3人姉妹の2番目として生まれ、8歳でゴルフを始める。岡山・作陽高では全国高校選手権団体の部で優勝。18年にプロテスト合格。19年5月のワールド・サロンパス・カップでツアー初優勝。同年8月にAIG全英女子オープン制覇。日米ツアー通算7勝。167センチ、62キロ。

◆渋野のプレーオフ 今大会含めプロでは3戦全勝。初体験の19年5月の資生堂レディースでは、18番パー4でイ・ミニョン(韓国)と対戦。1ホール目でグリーン左からの第3打をピン横1メートルにつけてパーとし、イがダブルボギーとして勝利。当時通算2勝目は黄金世代3人目のツアー複数優勝となった。2度目となった今月のスタンレー・レディースは、木村彩子、ペ・ソンウ、佐藤心結の4人が18番パー5で戦い、1ホール目で木村が脱落。渋野は2ホール目もただ1人連続バーディーとし、優勝。

<渋野日向子の優勝クラブ>

▼1W=PING G410 PLUS(シャフト=フジクラNXプロトタイプ ロフト角8度、硬さS、長さ44・75インチ)▼3W=PING 425 MAX(14・5度)▼7W=PING 425(20・5度)▼ハイブリッド=PING G425(5H=26度、6H=30度)▼アイアン=PING i210(6I~9I)▼ウエッジ=PING グライド3・0SS(46度、52度、54度、58度)▼パター=PING SIGMA2 ANSER▼ボール=タイトリスト プロV1