黄金世代の原英莉花(22=日本通運)が涙の復活優勝を飾った。後続に2打差をつけて首位スタート。

通算15アンダーで柏原明日架(25)鈴木愛(27)福田真未(29)に並ばれたが、終盤17番パー5で劇的なイーグルを奪い、通算17アンダー、267で後続に3打差をつけた。19年初優勝、20年国内メジャー2冠に続き、21年土壇場の優勝で「3年連続V」を達成した。

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優勝パットを決めた時から、原は何度も涙で声を詰まらせた。「今年は本当にいろいろあって…もう勝てないんじゃないか、と思ったり…。うれしいです」。18番グリーン、表彰式、インタビューでも泣いた。

首位スタートでスコアを伸ばせない。伸ばすライバルたち。15番グリーン横のリーダーボードを見ると、通算15アンダーに自分を含めて4人いた。大混戦は17番パー5で抜け出した。

ドライバーショットは右に曲げた。池があった。一瞬、ダメだと思った。しかし、ギャラリーのため息などはない。第2打地点に着いて驚いた。ウオーターハザードを示す赤線左すぐのラフにボールがあった。「あと1歩、1ヤード。奇跡です。私、歩測しましたから」。しかもライが悪くない。池越えのグリーンのピンまで214ヤード。7番ウッドでピン右8メートルをとらえた。

イーグルパットも自信はなかった。11番パー5では15メートルのイーグルトライがカップにクルッと嫌われた。「だから入るイメージがわかなくて。まさかでした」。距離を合わせたフックライン。今度はボールがカップに消えた。

絶頂からどん底を味わった。日本女子オープン、JLPGAツアー選手権リコー杯と国内メジャー2冠を達成で大ブレークした20年の締めくくり、12月全米女子オープンで初めてメジャーに挑み152位の予選落ち。今年4月ANAインスピレーションも113位で予選落ちし、帰国後即ぎっくり腰に。どう立て直せばいいか、暗闇の中でも希望は捨てなかった。12月の米ツアー最終予選会に出られる「世界ランク75位以内」を目指し、8月中旬のAIG全英女子オープンに出場した。結果は105位の予選落ち。しかし「イギリスがすごく好きだなって思えた。タフなセッティングを経験して、ゴルフの組み立てをもっと勉強しないとってすごくポジティブになれた」と言う。

ただ、勘違いしていた。全英で好結果を残せば…と意気込み、コロナ禍を憂う家族の反対を振り切り渡英した。ただ、その時点で「世界ランク75位以内」に入っても、出場資格を獲得する期限は過ぎていた。「実はそうなんです! 意味なかったんです!」と笑って告白する。無意味だったはずの強行渡英がはい上がるきっかけを与えてくれた。

師匠尾崎将司が口にする「3つのV」の「venture(冒険)」をボールにプリントした年、苦しみ重ねた冒険が、最後に勝運を呼んだのか。念願の3年連続ツアー優勝を、ラスト2試合で達成した。「ほんとビックリ」。21年最終戦は、苦しみが始まる直前に優勝した大会。ディフェンディング王者として臨む。「勝つ気で挑みたいです」。歓喜の涙を笑顔にかえて、原が力強く宣言した。【加藤裕一】

<原英莉花の使用クラブ>

▼1W=ミズノ ST-Xプロトタイプ(シャフト=グラファイトデザイン ツアーAD GP-5、長さ46インチ、硬さS、ロフト10・5度)▼FW=ミズノ ST200(3W15度)ミズノプロ(7W)▼アイアン=ミズノプロ 4~5I、JPX921ツアー(6I~PW、ギャップウエッジ)▼ウエッジ=キャロウェイ ジョーズ・フォージド(52、58度)▼パター=オデッセイ トゥーロン・ガレージ SAN DIEGO▼ボール=ブリヂストン ツアーBX