来季の賞金シードが確定するカシオ・ワールドオープン(25-28日、Kochi黒潮CC)で、53歳の手嶋多一(ミズノ)が2シーズンぶり23度目の同シード復帰を逃した。

賞金ランク76位で迎え、同シード圏は65位以内。単純計算で「単独12位」周囲の賞金加算も考えると「10位以内」は必要だったのに、37位フィニッシュで賞金ランク74位だから「完敗」だ。ただ「中身の濃い完敗」だった。

最終日、手嶋は通算6アンダーから「2ケタアンダーには」と68を目指した。結果的には通算13アンダー、2人の9位タイ(賞金408万円)でないと逆転はかなわず、7アンダー、65が必要だったが、パープレー。それでもビッグスコアの可能性は感じさせた。

3番パー4のバーディー。第1打を持ち球のフックでなく、あえて距離が落ちるフェードでフェアウエーに運んだ。20、30ヤード先に行き、ウエッジやショートアイアンを手にした星野陸也、久常涼と対照的に、残り170ヤード以上をミドルアイアンで3段グリーン2段目のピン右2メートルにつけた。

6番パー4のボギー。左ラフからの第2打をグリーン手前の池に落とした。圧巻はリカバリー。池手前から残り100ヤード前後の第4打を難なくピン30センチにつけ、ミスを最小限に抑えた。

手嶋は「池で終わっちゃいました。いや、その前の5番の方が痛かったかな」と言う。5番パー5で2メートルのバーディーパットをカップに蹴られ、直後の池ポチャ。ダブルボギーにしそうな流れを気持ちと技術で踏ん張った。その後バーディーこそ奪えなかったが、7、8、9番も5メートル、3・5メートル、6メートルのチャンスを作り、ビッグスコアを望める下地は作った。

19年に22シーズン続けた賞金シードを手放した。20-21年シーズンは「生涯獲得賞金25位以内」という特別シードで戦い、賞金シードを取り戻せなかった。

「コロナで特別なシーズンで(実力のある)多くの外国人選手が日本に来てない。そんな(シードをとりやすい)シーズンだったのに、とれない。正直、力不足でした」。

だからといって、諦めた訳じゃない。今年は日本シニアオープンで圧勝した。やがて専念するはずのシニアで力の差を見せた。「実は夢がある」と明かしたのは、米シニアツアー参戦。福岡・田川高卒業後、東テネシー州立大に留学し、英語に問題がない。「ただ、予選会とかの枠が狭くてね」と一足飛びの挑戦といかない。その時までレギュラーツアーで戦い、力を維持したい。

1つ年下の藤田寛之は今大会予選落ちで、23シーズン連続で保持した賞金シードを手放した。来季は、今季に自分が使った「生涯獲得賞金25位以内」の権利を行使し、ツアーで戦う。「また挑戦者として賞金シードを目指します」と宣言した藤田の心境を、手嶋は「そうですか。わかるなあ」とおもんばかった。

パワーゴルフが大きな潮流となり、若手の台頭が著しい時代。刺激的だが、それだけじゃつまらない。経験、技が力を倒す場面も見たい。そんな思いをかなえてくれるのがベテランだと思う。

手嶋は来季ツアー出場権をかけ、12月7日から最終QT(宮崎・トム・ワトソンGC)に出場する。【加藤裕一】