東北福祉大4年の蝉川泰果(21)が、国内ツアーの18ホール最少ストロークのアマチュア記録を2打更新する「61」の猛チャージで通算16アンダー、200とし、33位から首位に浮上した。前日の女子ツアーで山下美夢有が樹立した新記録「60」に肉薄。同学年の中島啓太のプロデビュー戦で、昨年大会の中島以来、史上6人目のアマチュアVに王手をかけた。大槻智春、宮本勝昌が首位に並んでいる。

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鮮烈の61だった。

前半15番パー5。蝉川が3番アイアン(I)で、248ヤード先のピン右前80センチにつけた。軽い逆風を切り裂くイーグルだ。終盤8番パー3は、バンカー越え、228ヤード先にある右奥ピンを4番アイアンのフェードで刺し、50センチにつけた。

前日23日、女子で山下のツアー新記録「60」がニュースになった。大学の1年後輩、中村凜キャディーと「明日は(同じ)12アンダーを目指すか」と話した。インスタートから“裏街道”のムービングサタデー。「前半で4つ伸ばした時に“あと4つは行きたいな”と言ったら、キャディーに『いや~、今日は12アンダーですよ』と言われて」。

最終的に1イーグル、10バーディーのボギーなしで11アンダーと1打及ばなかったが…。16、18番で4メートル、6番で2・5メートルのチャンスを外した。最大の悔いは2番パー5。フロントエッジまで257ヤードから3Iでピン右8メートルに2オンさせたのに、イーグル逃しの末に3パットした。

プロが「狭い」と嘆き、レイアップを多用するコースで「OBが怖いけど、覚悟を決めて」14ホール中12回もドライバーを握った。超アグレッシブなスタイルで山下を上回る可能性は、十分にあった。

今大会プロデビューの中島啓太は日体大、東北福祉大の主将同士でしのぎを削った。今月、フランス開催の世界アマチュア・チーム選手権も一緒に戦った。

「啓太は僕らの目標というより“一緒に写真撮って”という存在。でも、僕はライバルと思っている。いつかは追い越したい」。

その中島以来6人目のツアー・アマチュア優勝へ。6月に下部ツアーでは勝った。来季プロ転向に向け、11月8日からセカンドQTを受けるが、今大会優勝なら即プロ転向する。

「明日、勝つか負けるかで人生が変わると思って頑張ります」。

最終日は4月関西オープン以来2度目の最終組。当時は4打差3位から77と大崩れして、17位で号泣した。今度こそ、歓喜の涙を流す。【加藤裕一】

<蝉川泰果の61>

▼アマチュアの18ホール最少ストローク 過去最少は「63」。過去3例。いずれも三井住友VISA太平洋(太平洋C御殿場C)で、宮里優作が00年大会3R(パー72)金谷拓実が19年大会3R(パー70)中島啓太が19年大会4R(パー70)で記録。プロ最少は「58」。10年中日クラウンズ4R(パー70)で石川遼、21年ゴルフパートナー・プロアマ4R(パー70)で金成〓(王ヘンに玄)が記録。

▼大会最少ストローク新 過去最少は「62」で、石川遼が19年大会2R(東広野GC、パー71)で記録。

◆蝉川泰果(せみかわ・たいが)2001年(平13)1月11日、兵庫県加東市生まれ。ゴルフはプラスチッククラブで1歳から。兵庫教育大付中1年の13年に下部ツアー出場。興国高から東北福祉大。昨年末にナショナルチーム入り。ツアー出場18戦目で最高成績は今年の関西オープン17位。今年は日本アマ3位、下部ツアーのジャパンクリエイトin福岡雷山優勝、世界アマチュア・チーム選手権団体7位・個人2位。ドライバー平均飛距離は約300ヤード。175センチ、77キロ。