3打差5位から出た穴井詩(35=ゴルフ5)が2019年8月のNEC軽井沢72トーナメント以来、3年8カ月ぶりとなるツアー通算4勝目を飾った。

通算9アンダー、279で並んだささきしょうこ(26)とのプレーオフに突入。2回目に1・5メートルのバーディーパットを沈めた。金田久美子(33)は21位で生涯獲得賞金3億円に到達した。

35歳は冷静だった。18番パー5でのプレーオフ2回目。グリーン手前の左バンカーからの第2打をピンそば1・5メートルに寄せた。ささきはパーだったため、このバーディーパットを決めれば勝負は終わる。「もう3回目(のプレーオフ)に行きたくない。決めよう」。バーディーパットをねじ込むと、2度のガッツポーズで喜びを爆発させた。

3打差5位から出た最終日。グリーンも例年より硬く、風も強まる。女子ツアーでも屈指の難コース。スコアを落とす選手が続出し、一時は通算8アンダーで5人が並んだが、そんな大混戦をプラスに変えた。「(順位の)ボードを見るどころじゃなかった。耐え忍んで集中した」。15、18番のパー5でバーディーを奪い、最後に抜け出し、プレーオフに持ち込んだ。

昨季のドライバーの平均飛距離257・49ヤードで1位と女子ゴルフ界NO・1の飛ばし屋。だが、優勝からは3年以上遠ざかった。今季は飛距離だけでなく、コントロールも求めた。テークバックをスムーズに上げるため、アドレス時の猫背を矯正。パーオン率は昨季の25位から今季は3位に上昇するなど、この日の難条件での優勝につなげた。

10代、20代の若手の活躍が目立つ女子ゴルフ界。下からのすさまじい突き上げもあり、30歳以上のトップ選手は少ないが、本人はあまり年齢を気にしない。「もっとうまくなりたい。ここを直したいとの気持ちしかない。全然終わりが見えない」とベテランの原動力を明かした。

「(シーズンの)複数回優勝をしたい。メジャーも取りたい。賞金1億円も超えたい。欲望しかないです」。約3年8カ月ぶりの優勝にも満足感はどこにもない。このメンタルが35歳を支える。まだまだ進化を止めるつもりはない。【田口潤】

◆穴井詩(あない・らら)1987年(昭62)11月11日、愛知・岡崎市生まれ。11歳でゴルフを始め、中学2年で父幸二さんの転勤で渡米。07年6月に帰国、翌08年のプロテストで合格。16年9月のゴルフ5レディースでツアー初優勝。その後、17年7月のセンチュリー21レディース、19年8月のNEC軽井沢72トーナメントを制し、今大会がツアー通算4勝目。名前の詩(らら)の由来は父から「音楽好きの子に」との意味を込められた。