<こんな人>

米挑戦1年目の山下美夢有(みゆう、24=花王)が、待望のツアー初勝利をメジャー大会で飾った。3バーディー、1ボギーの70で回り、通算11アンダー、277。第2ラウンドから首位を守り続けて逃げ切った。

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ずっと3番手だった。山下と同じ01年度生まれ「新世紀世代」には、強力なライバルが2人いた。笹生優花と西郷真央。19年11月、それまで高校卒業後しか受けられなかったプロテストの受験資格が、高校3年在学中に引き下げられた。3人は史上初、現役女子高生で合格し、当初から注目された。その中で常に先頭を走っていたのは笹生。続くのが西郷で、山下は3番手という位置付けだった。

笹生はルーキーの20年、国内ツアーでプロ2、3戦目で連勝した。翌21年には全米女子オープンを制し、現在は日本人唯一のメジャー2勝を誇る。西郷はコロナ禍で統合された、ルーキーの20-21年シーズンで年間4位。山下よりも一足早く、昨季から米ツアーを主戦場に移し、今年4月のシェブロン選手権を制してメジャー女王となった。山下は21年に1勝したがルーキーシーズン13位。2勝目までは1年以上を要した。

転機は、その2勝目を挙げた22年5月の国内メジャー、ワールド・サロンパス・カップだった。大会前、約1カ月ぶりに会ったコーチの父勝臣さんに、右を向く悪癖を見抜かれた。そこで大会中、打ちたい方向にクラブを向け、いわば矢印のように方向を示したクラブに合わせ、体の向きを変えていく動作を全ショットで繰り返した。一見、初心者のような動作。恥ずかしさもあっただろう。だが山下にとって生涯の信念が確立した。「人と比べない」。

先を行く笹生、西郷の背中すら見えなくなりそうな時期もあった。通算2勝目を挙げた直後に「少し焦りはあった。1勝してから思うような順位、ゴルフができないことが多くて、本当に苦しかった」と打ち明けた。比較されることの多かった2人に対し「人と比べない」と決めてからは、国内ツアーで快進撃。22、23年と2年連続年間女王に輝いた。昨季こそ竹田麗央にその座を譲ったが、平均ストロークは1位。ピカイチの技術、安定感を武器に、今季から米国へと渡った。

メジャー女王になったのも3番手だった。だからといって、山下の快挙は色あせない。国内ツアーでも最小の身長150センチ。米ツアーでは飛距離で50ヤード劣ることがあっても「人と比べない」。両足に2キロの重りをつけてダッシュしたり、両親に小食にならないよう“監視”されながら毎食大盛りご飯を完食したり。ジムに通う選手は多いが、地道な体づくりで正確なショットを磨いてきた。名前の由来は母有貴さんから譲り受けた「有」と「美しい夢を持ってほしい」。小さな体に大志を抱き、世界最高峰に立った。【高田文太】