トロロッソ・ホンダはピエール・ガスリーが11位、ブレンドン・ハートリーがリタイアとノーポイントに終わった。最大の要因は、マシンのセットアップを煮詰めきれなかったことだった。

 チームはこのオーストリアGPに新型フロントウイング、ノーズ、フロアなどの空力アップデートを投入。ダウンフォース量の増加はデータ上で確認できたものの、コーナリング旋回中の挙動変化をスムーズにセットアップできず、ドライバーが安心して攻められる状態に仕上げられなかった。

 「今週末のパフォーマンスが期待値を大きく下回ったことは事実だよ。チームは(データ上では)ダウンフォースが増えていると言う。でもそれをラップタイムにつなげることができなかった。コーナー入り口での不安定さとコーナーを抜けて行く中での安定感、マシンバランス(の変化)が僕に合った状態になっていなかった」(ハートリー)

 ガスリーはスタート直後に接触されてマシンにダメージを負い、本来のダウンフォースが出ず挙動が不安定でステアリングと格闘しながらのレースになった。

 「1周目のターン3でストフェル(・バンドールン)に接触されて右リアサスペションが曲がり、フロアも半分ダメージを負ってしまったんだ。だからクルマは(ダウンフォースを失って)あちこちでスライドしまくるようになってしまったし、常にクルマと格闘しているような状態だったんだ。今日はF1マシンというよりもラリークロスのマシンをドライブしているような感じだった。コースオフしそうになったことも20回くらいあったし、最後まで走り切れたのが不思議なくらいだよ」

 ガスリー車のダメージを正確に把握できず、ガスリー優先のため順位を譲らせタイムロスさせてハートリーのレースを妥協させるなど、戦略面での不備も目立った。ハートリーはチームの戦略に不満をにじませながら、トラブルがなければポイントを獲得するだけの実力があったと悔しがった。

 「ピエールを先行させなければならなくて、僕の方がペースが良くて僕は彼の後ろに引っかかるようなかたちになってしまったんだ。それによって僕のレースはかなり妥協を強いられることになってしまった。もし違う戦略を採っていれば、僕はもっと前のポジションにいただろう。でもいずれにしても今日はポイント獲得が可能な速さがあったとチームも認めてくれているよ。だからこそとてもガッカリしている」

 パワー面では第7戦カナダGPで投入したスペック2パワーユニットがルノーと同等の出力を発揮しているが、アップデートされた空力パーツがうまく使えなかったことで、マシンパッケージとしてのまとまりを欠いてしまったとホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは語った。

 「パワーユニット側のスペック1と2の性能差は明らかに見えていますから、それは良いと思います。今回はトロロッソの新空力パーツも加わりましたが、まだまだ結果を明確に出せるレベルのものにはなっていません。まださらに理解を深めなければ使いこなせませんが、使いこなせた時にどこまで行けるかどうかというのはまた次の問題だと思います」

 F1は史上初の3週連続開催の真っただ中で、4日後には第10戦イギリスGPを迎える。トロロッソのファクトリーでは大至急、オーストリアGPでのデータ解析が行われ、新パッケージを使いこなすための準備が進められている。(米家峰起通信員)