【ブダペスト22日=三須一紀】卓球世界選手権個人戦のシングルスが23日、からスタートする。日本卓球界をけん引し、今回を最後の世界選手権と位置づける水谷隼(29=木下グループ)は今の心境を語った。

「リオ五輪は大きな区切りでした。その後はボーナスステージのような感じでやってきました。全日本もTリーグも。今回もそのボーナスステージの1つ。昔のように、この試合で絶対に勝たなければいけないというガツガツした感じではありません」

達観したような思いでこの舞台に立っていることを空かした。平成の日本卓球界を背負い、くしくも平成の暮れに行われる世界選手権。帰国予定日も4月30日と、平成最後の日だ。5月1日からの新元号「令和」に向け、卓球界への提言も口にした。

16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)で日本卓球界初となるシングルスの五輪メダルを獲得した平成卓球界の申し子。令和では、愛好での卓球を除いて「卓球には関わらないで新しい分野に挑戦したい」と明かした。世界選手権個人戦8回連続出場、全日本選手権シングルス10度優勝など数々の栄光にも、後輩達には「僕なんかを目指さず、超えていかないといけない」と、まるで自分を“過去の人”のような言い方までする。

「(卓球界が)今のままでは良くない。張本以外、強い選手がいない。日本は良い環境なのにそれを生かし切れていない。もっと強くならないといけない」と言った。

水谷が若い頃と比べ、協会予算は増え、ナショナルトレーニングセンターもでき環境は充実した。水谷が思う改善点を聞くと「資金をトップ選手に集中させても良いと思う。もうメダルが取れないと分かる選手に見切りを付けるようなことも必要だと思う」と大胆に言った。現在はある程度、幅を持って予算配分をしている印象だという。ただ、「自分が、どうこうしようという牙はもうない」と笑った。

令和での卓球キャリアについて聞くと「東京五輪後に第一線を退いてからは、自分が卓球に関わっていくとは思えない。指導者の可能性はゼロではないが、別のこと、新たな分野でチャレンジしていきたい」と新たな事業に取り組みたい意向を明かした。