初優勝を目指すAシード御所実(奈良)が過去優勝5度のBシード東海大大阪仰星(大阪第3)を14-0で完封し、3大会ぶりの4強を決めた。

竹田寛行監督(59)が89年の就任以来こだわり続ける防御が機能し、今大会の失点は3回戦光泉戦の1PGのみ。トライを許さない鉄壁の防御を武器に、常翔学園(大阪第2)との近畿対決に向かう。

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花園の決勝で3度泣いてきた。前半7分、WTB沢口が個人技で貴重な先制トライ。勝負の厳しさを知り尽くす竹田監督は「足が速い」と長所を挙げた上で「片手のトライ、気に入らんけど」とくぎを刺した。監督31年目、こだわりは細部にある。表情を変えない知将だが「集中力があった。精度よく頑張ってくれた」と完封の堅守はたたえた。

今から31年前、奈良は全国制覇6度を誇る天理の1強だった。89年の監督就任時、部員は2人。強敵に勝つために「やられたシーンからやった」と防御を磨くしかなかった。天理と互角に渡り合い、95年度に花園初出場。そのノウハウを学ぼうと訪れる他校の監督は、内容に目を丸める。御所実はインゴールに入られたと想定し、相手の下に潜り込み、トライをさせない技術まで徹底的に練習する。

東海大大阪仰星とも毎年、何度も練習試合を行う。この日、自陣ゴール前のラインアウトではモールを作らせる前に崩し、危険なタックルの反則で一時14人となっても集中し続けた。後半3分に華麗な走りでトライした高校日本代表FB石岡も「みんなの気迫を感じた」と一体感を強調した。

後半には味方のキックが相手に当たった瞬間、前方にいたFW陣が一斉にボールへたたみかけた。本来はオフサイドの選手たちも、チャージの直後はプレー可能になる。その瞬間にさえ「やりきるために練習しています」(中瀬古部長)と抜け目なし。石岡は準決勝の焦点をこう掲げた。「ディフェンスで優位に立つ。前で圧力をかけたい」。信じてきたラグビーで、頂点に駆け上がる。【松本航】