前回準優勝でAシードの桐蔭学園(神奈川)が、東福岡(福岡)に34-7で快勝し、2大会連続の決勝進出を決めた。鉄壁のディフェンスを持ち味に、W杯日本代表FB松島幸太朗(26=サントリー)を擁して東福岡と両校優勝だった10年度以来、9大会ぶりの日本一を目指す。初優勝を狙うAシードの御所実は、常翔学園(大阪第2)を26-7で下し、5大会ぶり4度目の決勝進出。悲願達成へあと1勝と迫った。決勝は7日午後2時に行われる。

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どこからでも突進してくる東福岡のFW陣を次々と止め、攻撃の芽を摘んでいった。パスを回させながら、ラインをどんどん下げさせ、勝負どころでボールを奪う“横綱相撲”で完勝。FWを引っ張るプロップ床田は「1年間力を入れてきた縦へのディフェンス。前に出てタックルして、自分たちの攻撃につなげられた」と納得の表情を見せた。

約6時間のミーティングが生きた。4日の午前と夕食後に意見を出し合ったが、まだ足らないと、5日朝にも行い、試合に臨んだ。序盤はパスを多用した展開ラグビーで進めたが、相手の出方を見て「キックを使って敵陣でプレーしよう」と作戦を変更。いろんな場面を想定していたからこそ、すぐに順応できた。

基本を怠らない「ワンチーム」ぶりが桐蔭学園の強みだ。その屋台骨を支えるのはSO伊藤主将。1年から花園でプレーしている伊藤だが、2年生まで「先輩たちに乗っかってただけ」。新チームで主将に任命されたが、昨年の花園で右手を負傷し、春まで裏方を経験。「多くの人に支えられて自分がプレーできている」と周りを見るようになった。納得するまでお互いに意見を言い合える環境にした。練習では常に厳しい表情で手を抜かず、途中で止めてでも話し合った。

伊藤主将は福岡出身で、東福岡へ入学する選択肢があった。しかし「継続したボールの動かし方など日本代表に近くて、自分のプレースタイルに合っている」と桐蔭学園へ進学。基礎からしっかり鍛え上げ、人間形成を重んじる藤原監督のもとで、チームを引っ張る存在へと成長した。この日は中学時代の仲間と対戦し「花園という大きな舞台で戦えてうれしかった。彼らの分まで頑張りたい」。

悲願の単独制覇へあと1勝。伊藤主将は「前回負けてから、優勝するためだけにやってきた。いつも通りやれば勝てると思う」と最後まで平常心を誓った。【松熊洋介】