桐蔭学園(神奈川)が23-14で御所実(奈良)を下し、東福岡と両校優勝した第90回大会以来、2度目の優勝を果たした。

優勝の瞬間、桐蔭学園の選手たちは跳び上がって喜んだ。涙を浮かべる選手もいた。藤原監督は「苦しい中で後半よく立て直してくれた。前半終了間際に相手のミスが出て、流れが来ると思っていた。後半はもっとボールをつなごうと指示し、しっかり3年生がやってくれた。今年は選手たちがよくやってくれた1年でした」と振り返った。

7度目の決勝でついに単独での頂点に立った。W杯日本大会で活躍した松島幸太朗(26=サントリー)を擁した90回大会は31-31で東福岡との両校優勝。終了間際に同点に追いつかれ、あと1歩のところで単独優勝を逃した。藤原監督は「あの時とチームも相手も全然違う」と話していたものの、6日の前日練習では「監督になって単独優勝の景色をまだ見たことがない。(2点差で敗退した)前回大会は1ゴール足らず、悔しい思いをした。選手たちはもっと勝ちたいんじゃないですか」と熱い思いを口にしていた。

松島からは5日の東福岡戦勝利後、藤原監督のもとへ「決勝進出おめでとうございます。(決勝は)試合を見に行きたかったけど(サントリーの)練習になりました」とラインで連絡があったという。先月24日に松島が母校を訪れた際にエールを送っていたため、今回は選手に知らせなかったが、優勝を経験した先輩の言葉を胸に、選手たちは一丸となり、2度目の優勝をつかんだ。

勝利の裏には徹底したミーティングがあった。95年に10年連続だった花園出場を逃し、スポーツ心理博士で、現在は慶大野球部や東大ラクロス部などを指導する布施努氏(53)をメンタルトレーナーとして招いた。ミーティングは選手だけで行い、自己判断・発信が出来る人間作りを行った。役割を持たせ、自立させた。ずっとつけていた目標ノートは「しっかり」「正確に」などあいまいな言葉を廃止。昨夏には大学生を招き、テーマに沿って議論。次々と出てくる意見に大学生がたじろぐ場面もあった。藤原監督は見ているだけで、選手同士が納得するまで終わらない。今大会の準々決勝東福岡戦では3日間で6時間以上にも及んだ。

決勝当日朝も同じようにミーティングを行い、試合開始100分前に球場入り。「特別なことはやってない。花園に来る前に準備は終わってますから」と藤原監督。伊藤主将も「花園に入る時点で優勝する気持ちで臨む」と選手の意識を統一させ花園入りした。いつも通りのルーティンを崩さず、決勝まで普段通りのラグビーを貫いた桐蔭学園がついに悲願の単独日本一を勝ち取った。【松熊洋介】

 

◆桐蔭学園 1964年(昭39)に男子校として創立。81年女子部設立。ラグビー部は64年創部、部員数は94人。花園は優勝2度、準優勝5度。野球部やサッカー部も全国レベル。ラグビー部の主なOBに松島幸太朗(サントリー)、佐藤大樹、小倉順平(NTTコム)。プロ野球の元巨人高橋由伸、元阪神平野恵一、俳優織田裕二、医師でタレント西川史子らも輩出。生徒数男子2020人、女子1290人。所在地は横浜市青葉区鉄町1614。岡田直哉校長。