「日本のエース」村上茉愛(24=日体ク)が計4種目でトップの56・298点をマークし、首位通過した予選との合計112・564点で2年連続5度目の日本一に輝いた。18年世界選手権銀メダリストが、競技人生の集大成となる東京五輪へと前進した。畠田瞳(セントラルスポーツ)が2年連続2位、平岩優奈(戸田スポーツク)が3位につけた。4枠の五輪団体総合メンバーのうち、今大会の得点を持ち点として争う5月のNHK杯(長野市ビッグハット)で、上位3人が自動的に選ばれる。

   ◇   ◇   ◇

村上は2回、繰り返した。「少し、少し、自信は持てたかなと思います」。わずかだが、大きな一歩。ほほ笑み、振り返った。それがこの優勝の意味だった。

悩み、後ろ向きになることが多かったという。19年5月に腰痛で戦線離脱し、さらにコロナ禍に。20年9月の全日本シニア、同12月の全日本選手権では2年ぶりに優勝したが、1つの疑問が消えない。「私って強くなってるのかな」。

答えは五輪選考会だからこそ、得られた。「今回で失敗があっても、点数の差を開けてNHK杯に進める」。構成を変えた平均台で落下も、後続に約2点差。五輪をかけた大一番で、結果は雄弁だった。

失敗した平均台後の最終、床運動。「クヨクヨしている場合じゃないな」。そこで強さを確信したかった。17年世界選手権では金メダルを手にした種目だが、「最近、点数を取れてない」。跳躍以外のダンスの動きなどを見直してきた。審判講習会にも参加し、細かい減点箇所を修正した。曲も一新した演目で、14・366点。求めていた、強さの1つの答えだった。

優勝が確実だった床運動では、貪欲に加点も求めた。五輪本番で、金メダルを考えるからこそ、安全策はなかった。「時が止まっている感覚があった」。試合前に口にした言葉を、もう繰り返すことはないだろう。【阿部健吾】