支えてくれた皆さんに恩返しをしたい-。報徳学園(兵庫)のNO8石橋チューカ(3年)はまっすぐな瞳で語った。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた、ニューヨーク生まれ姫路育ち。9歳で出会った楕円(だえん)球を追い続け、高校ラストイヤーで、春の選抜、夏の7人制に続く「3冠」に手が届くところまでたどり着いた。

今年から「花形」のNO8を任されている。チームは素早くボールを回してトライを狙う攻撃が持ち味。攻撃、守備の両方のプレーに絡む位置での活躍が期待される。190センチ、95キロの体格でありながらスピードもあり「リーチ・マイケル2世」とも呼ばれる期待の選手だ。だが、そんな石橋にも挫折があった。

「1年生の花園前にケガをして、メンバーに入ってたのにケガで出られなくなった。めちゃくちゃ悔しくて、そのときはラグビーやめたいなと思いました」

傷心の石橋を励ましてくれたのは、米国人と日本人の両親を持つLOジョーンズ日光(3年)だった。共感できることも多く、距離が近くなった。最初に悩みを打ち明けたのも、ジョーンズだった。

もう無理かも-。返ってきたのは「その悔しい思いをどこにぶつけるの? 今まで頑張ってきたんだから」という熱い言葉だった。

「ジョーンズはどんなことがあってもくじけない、ポジティブな人。僕は落ち込んでしまうこともあるけど、そういうときにいつも声をかけてくれる」

互いに「高め合える存在」と認め合う2人は、ウエートトレーニングを一緒に行い、刺激し合う。仲間がいるからこそ、ここまで3年生38人が誰ひとり欠けることなくやってこられた。

石橋は母子家庭で、3人兄弟の末っ子。多くの人に支えられた。女手一つで育ててくれた母親、小学生の頃、母の代わりに練習の送迎をしてくれた友人家族、高校入学当初から下宿を受け入れてくれた、OBで元日本代表の高木重保氏の母親、3年間ともに汗を流してきた仲間…。支えの大きさを理解しているからこそ「恩返し」という言葉を何度も口にする。

「ここまで来られたのは、周りの人の支えがあったから。2冠(を達成)してて期待もされているので、恩返しできるように優勝したい」

周囲の人への感謝を胸に花園で史上4校目の3冠へ突き進む。【竹本穂乃加】(おわり)

◆石橋チューカ(いしばし・ちゅーか)2004年(平16)4月10日、米国ニューヨーク州生まれ、兵庫県育ち。地元の姫路ラグビースクールで競技を始める。昨季の花園ではLOを務めた。昨年から高校日本代表候補に選出される。190センチ、95キロ。