途方に暮れるところだった。32年ぶりの日本開催となった愛知・名古屋アジア大会。開幕前日の18日に現地入りした記者にとってこれがスポーツの祭典の取材デビューとなった。
最初につまずいたのは、まさかの「移動」。取材パスの手続きのため、初日に向かったのは名古屋市の金城ふ頭にあるメインメディアセンター(MMC)。名古屋駅から専用のシャトルバスを探したが、乗降場所の案内標識がどこにも見当たらなかった。過去に五輪を取材したことがある先輩記者から国際総合大会の規模になれば英語や数字で記号化された発着地点を示す大きな看板があると聞いたことがある。
だが、そんなのはどこにも見当たらない。
開幕前とはいえ、10日から競技も始まっている。「こんなことってあるのか」。国際総合大会の取材ができる高揚感に変わって違和感が押し寄せてきた。
駅内の総合案内所のスタッフにも聞いたが、回答は「分からない」の一言。スーツケースを引きながら桜通口から太閤通口を何度も往復した。英語で書かれた報道関係者用の交通案内資料も読み返した。しかし、乗降場所の位置情報まではない。予定の時間が迫る。仕方なく電車移動をすることにした。20キロ近いスーツケースを引きながら。
MMC到着後、記者は交通案内の受付でバス乗り場の場所を尋ねた。しかし、返ってきた答えは「大量の情報を今、私たちも処理しているところで詳細まで分からない」。その後、ボランティアの男性が「僕、太閤通口からMMC行きのバスが出るのを見ました」と教えてくれた。
複数のスタッフの話によると、旅行会社やバス会社との連絡体制や案内スタッフらの研修などがうまく進んでいないことが今回のような混乱を招いていた。
20日のバスケットボール男子決勝の午前中には優勝した韓国代表の送迎バスが迎えに来ず、直前練習をキャンセルする事態も起きた。トライアスロン取材後に偶然、中国人のメディア関係者と話した時の言葉が引っかかる。
「東京五輪の時の『お・も・て・な・し』はどこへ行ったんだ?」
トラブル、アクシデントが相次ぐ今大会の入り口を感じた瞬間だった。


