不整脈とどう向き合うか 錦富士の覚悟「気持ちが切れちゃったらもうやれない」

不整脈を患いながら、土俵に立ち続ける力士がいます。

幕内力士の錦富士(30)は8月に息苦しくなり、「心房細動」と診断されました。心臓の手術を勧められましたが、医師と話し合った末に先送りしました。

妻からは引退を勧められたこともあります。それでも土俵に立ち続けています。

病気、ケガとの向き合い方を聞きました。

大相撲

◆錦富士隆聖(にしきふじ・りゅうせい)本名・小笠原隆聖。1996年(平成8年)7月22日生まれ、青森県十和田市出身。青森・三本木農業高から近畿大学。近畿大学2年の時に中退し、伊勢ケ濱部屋入門。2016年九州場所序ノ口優勝、2017年初場所序二段優勝、2020年春場所幕下優勝。2020年秋場所新十両、2022年十両優勝。2022年名古屋場所で新入幕を果たし、10勝5敗で敢闘賞を受賞した。最高位は西前頭3枚目。184センチ、154キロ。

引退を勧められた

錦富士が体の異変を感じたのは、8月1日の朝だった。

7月の名古屋場所を終え、場所後の休みの最終日。翌日から夏巡業が始まるため、岐阜市へ移動する予定だった。

名古屋市内のホテルで目を覚ますと、「呼吸ができないっていうか、苦しい感じでした」。

東京から家族が車で名古屋まで来ていた。救急車を呼ぼうとしたが、近くで診察を受けられることが分かり、妻・静香さんの運転で病院に向かった。

不整脈だった。

この日が初めての発症ではない。「定期的にそういう発作みたいなのがあったので、いつ起きてもおかしくなかったんです」。

別の大きな病院での検査を勧められた。

脈拍数は120以上になっていた。

「落ち着かなければ、すぐに入院だと言われました。手術の日取りも決めるので、家族に荷物を持ってきてもらうようなことも言われました」

夏巡業は休場せざるを得なかった。

幸いにも3、4時間で症状は治まり、東京に戻って再検査。「心房細動(しんぼうさいどう)」との診断名が出た。

心房細動とは、心臓の上にある心房が小刻みにけいれんし、脈が不規則になる不整脈の一種。動悸(どうき)や息切れの症状が出て、疲れやすくなる。同時に、脳梗塞や心不全のリスクが高まってしまう。

妻からは引退を勧められた。

「確かに、今、いただいているお金を違う仕事で稼ぐっていうのは大変なこどですが、命には替えられないですし、やめて欲しいと言われました」

手術を回避

錦富士は今後のこと、自分の体のことを真剣に考えた。医師とも妻とも話し合った。師匠の伊勢ケ濱親方(元横綱照ノ富士)には、正確な病状を知ってもらいたくて、診察を受けるその場で電話をして、医師から直接説明を聞いてもらったこともある。

9月の秋場所は、15日間を皆勤した。医師にも相談し「1日一番出ることに問題ない」と確認できた。

当初、秋場所後に手術を受ける予定だった。錦富士は「管を入れて、心臓を焼く。脳梗塞のリスクをなくすために、心臓の邪魔をしているところを焼くんです」と説明していた。

カテーテルアブレーションと呼ばれる治療法で、足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を心臓に入れ、不整脈の原因となっている異常な電気信号の発生源を焼く。効果の高い治療法と言われている。

しかし、場所後にあらためて診察を受け、現役の間は回避する方針を決めた。

薬の服用や生活改善により、症状を抑えられていることも大きいという。

錦富士は「伝え方は難しいんですが…」と前置きした上でこう説明する。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。