裏オプションを配備! ラグビー日本代表は21日、本格始動3日目を迎えた北海道・網走市内の合宿でドロップゴール(DG)を用いた戦術を確認した。

実戦練習の最後に田村優(30=キヤノン)が成功。同じSOの松田力也(25=パナソニック)も取り組み“サヨナラDG”を想定した。12年11月以降、代表テストマッチで成功例のないDGを、W杯の切り札にする。

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長袖必須の肌寒い網走に、日本代表の喜びの声が響いた。「ナイスキック、優さん!」。15人同士で40分以上続いた実戦練習の最後だった。15年W杯南アフリカ戦の最終盤と重なるゴール前左スクラムから、初めの攻撃は中央に寄せてラック。続いてボールを受けた田村はDGを選択し、低い弾道のキックはポール間に吸い込まれた。流れの中の“飛び道具”は3点を導き、練習を締めくくった。

日本にとっては、意表を突く裏オプションになる。この日、田村同様に取り組んだ松田は「全てはW杯のため。ああいう場面は必ず来る。本番で決められるように」と包み隠さず言った。ボールをワンバウンドさせながらキックするDGは、成功で3点を獲得。その一方で、攻撃しながら繰り出すオプションのため、相手の圧力や地面の影響を受けやすい難点がある。日本のテストマッチにおける直近の成功は12年11月グルジア(現ジョージア)戦。同点の試合終了間際にSO小野晃征(サントリー)が決めて以降は遠ざかる。

03年W杯決勝のオーストラリア戦では、イングランドの名SOウィルキンソンが利き足の左でなく、右で“サヨナラDG”。精度次第では大きな武器となる。WTBレメキは「スペースを作ることが大事。そうすれば(田村)優も(松田)力也もレベルが高い」。パスの出し手になるSH茂野も「キッカーにプレッシャーがいかないよう(防御と)タイミングをずらす」と力を込め、SOの負担をチーム全体で減らしていく。

W杯開幕のロシア戦まで1カ月を切り、今合宿のテーマは「ディテール(細部)」と「ファイナルプッシュ」。メディア、ファンの前であえて確認したDGは、対戦国を意識した情報戦の可能性もある。史上初の8強へ、格上との接戦は不可避。細部まで徹底して準備し、時計の針を進めていく。【松本航】

◆DG 通常のプレー中にドロップキック(ワンバウンドさせてから蹴る)でゴールを狙い、成功すれば3点入る。相手のプレッシャーもあり、ゴールキックのようにボールが固定されていないため、難度が高い。フィールドのどこからでも、いつでも、誰でも、狙える。僅差のゲームなど、トライが難しい時に得点の手段として用いられる。

◆W杯とDG 最も有名なDGは、03年W杯決勝でイングランドを初優勝に導いたSOジョニー・ウィルキンソン。17-17で迎えたサドンデス方式の延長戦、オーストラリアを相手に約30メートルの距離から決めた。15年W杯決勝でオーストラリアと戦ったニュージーランドは、SOダン・カーターが4点リードの後半29分に約40メートルの距離からDGを決め、勝負を決定的にした。日本は87年W杯のオーストラリア戦で、WTB沖土居稔が自身公式戦初の試みで約50メートルのDGを決めた。